■手術は不要
イヌのアトピー性皮膚炎の発症率は15%といわれ、かゆがる愛犬のために動物病院に通う飼い主は少なくない。また加齢や肥満などで背骨を痛めてヘルニアになるイヌは多く、排泄(はいせつ)がうまくできなくなったり、触られるのを嫌がったりするケースがある。
これまでは、炎症を抑える薬の投与や手術による治療が一般的だった。細胞医薬品が実用化されれば、注射などで体内に投与した薬が疾患部に作用し、手術は不要となる。細胞医薬品は傷ついた組織や機能を元に戻す力を持ち、抜本的な治療につながる可能性があるという。
大日本住友製薬の子会社で動物向け医薬品を手掛ける「DSファーマアニマルヘルス」(大阪市)が、細胞培養の実績があるベンチャー企業J−ARM(同)と共に開発。骨や脂肪に分化する性質を持つ「間葉系幹細胞」を健康なイヌから採取・培養して薬を作る。
DS社は今年、細胞医薬品の安全性を確かめる試験を進めており、今秋以降に臨床試験に取り組む。副作用などの問題がなければ、農林水産省に製造販売を認めるよう申請する。
■「ペットの負担を少なく」
イヌやネコの再生医療は現在、細胞培養ができる動物病院で、獣医師が培養した細胞薬を使って治療を施すことだけが、農林水産省令によって例外的に認められている。
獣医師らで作る「日本獣医再生医療学会」の岸上義弘会長は「承認された医薬品が販売されれば、細胞医療を施せる獣医師が増える。品質管理や安全性についてのガイドラインを作成するなどした上で、ペットの負担が少なく効果の高い再生医療を広げていきたい」と話している。
2017.5.10 06:30
http://www.sankei.com/west/news/170510/wst1705100014-n1.html
