【シリコンバレー=佐藤浩実】米クアルコムは9日、データセンターで人工知能(AI)の計算処理に使う半導体に参入すると発表した。スマートフォン向けで培った技術を転用し、省電力で動作するチップを2020年に量産を始める。AI計算に特化したチップは半導体メーカーや新興企業のほか顧客であるクラウド企業も自社開発を進めており、競争が激しさを増しそうだ。
クアルコムが参入するのはAIの一種である機械学習の「推論」と呼ぶ処理に特化したチップ。機械学習は大量のデータから特徴となるパターンを抽出する「学習」と、学習の成果をもとに新たなデータを判断する「推論」という処理からなる。現状はインテルの汎用CPUを推論に使っているデータセンターが多いが、電力使用量を抑えられる専用品に対する需要は大きい。
クアルコムは新製品について「市場に出回っている製品に比べ、消費電力あたりの性能を10倍以上にできる」(担当者)と説明している。チップの回路線幅はスマホ向けの先端品と同じ7ナノ(ナノは10億分の1)メートル。米マイクロソフトや米フェイスブックと組んで開発を進めているという。
クアルコムは以前、計画していたデータセンター向けCPUへの参入を断念した経緯がある。クリスチャーノ・アモン社長は日本経済新聞に対し「CPUの壁はとても高かったが、AI推論用のチップはまだ勝者が確定しておらず参入のチャンスがある」と話した。25年までにデータセンターで使うAI計算用の半導体だけで、市場規模が170億ドル(約1兆9千億円)になると見込んでいる。
ただ、AI推論をにらんだ半導体はインテルやエヌビディアも手がけ、スタートアップ企業も合わせると「30社以上が参入を試みている」(半導体業界に詳しいアナリストのパトリック・ムーアヘッド氏)。グーグルなどIT(情報技術)企業が自社でAI計算に最適化したチップを作る動きも広がっており、AIをめぐる覇権争いがハードでも目立ってきた。
2019/4/10 7:21
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43555780Q9A410C1000000/