パワハラ労災認定男性「続くと脱出困難、早めの相談を」
長崎市の広告代理店で上司から執拗(しつよう)な叱責などのパワーハラスメントを受け適応
障害になったとして、長崎県諌早市の男性(44)が1月、長崎労働基準監督署から労災認定
を受けた。全国的にパワハラによる労災認定が増加するなか、取材に応じた男性は「パワハラ
を受け続けていると正常な判断ができなくなり、脱するのが難しくなる。身を守るための知識
を身につけ、早めに専門家に相談することが重要」と警鐘を鳴らす。
「地獄だった」。労災認定の通知を受け取った男性はつぶやいた。2012年春から広告代理
店でデザイナーとして勤め始めたが、その1年後、上司が代わってから執拗ないじめが始まっ
た。わずかなミスでも「うそつき、ひきょう、育ちが悪い」と人格を否定されて罵倒された。
過重な仕事量に加え、説教が数時間に及ぶため深夜になっても仕事が終わらず、インターネッ
トカフェやサウナで仮眠して、翌朝出社する日々が続いた。
上司と男性に、派遣社員1人を加えただけの職場だった。男性は「上司の要求に応えられない
自分が悪いと思い込んでいた。異常な状況だと気づけなかった」と振り返る。男性は「自分が
悪い」と思い込み、涙を流して謝罪したが、上司は「わざとらしい芝居をしやがって」と吐き
捨てた。
食事がのどを通らず、眠れなくなり、自殺を考えるようになった。14年7月、適応障害と診
断され、休職した。会社のオーナーに文書で被害を訴えたが、会社から届いたのは解雇通知だ
った。男性は親族から勧められた「ブラック企業対策」の本に載っていた弁護士に相談し、労
災を申請した。
長崎労基署は「明らかに業務指導の範囲を逸脱した発言が執拗に行われ、いじめ、嫌がらせに
あたる」として、男性が強い心理的負荷を受けていたと判断。労災と認定した。
(中略)
労働問題に詳しい日本労働弁護団常任幹事の中川拓弁護士は「異常な勤務状態に、なかなか自
分では気付くことができず、最悪の場合、自殺に至ってしまう。おかしいと思ったらまずは仕
事を休んで医師の診断を受け、労働組合や弁護士に相談してほしい」と呼びかける。
http://mainichi.jp/articles/20160522/k00/00e/040/159000c