コロナ禍の影響を受けた日本の5大商社に、大物投資家が食指を動かしている。
「投資の神様」という異名を持つ、ウォーレン・バフェット氏がCEO(最高経営責任者)として率いる米国の投資会社「バークシャー・ハサウェイ」によれば、8月31日に三菱商事や伊藤忠商事といった、いわゆる「5大商社」の発行済株式総数の5%超を子会社で取得したという。
同社は、将来的には足元の2倍近い水準となる9.9%まで持ち高を高める可能性についても言及している。 コロナ前超えは伊藤忠だけ 5大商社の株価は、この発表が行われた31日以降、値上がりを続けた。
特に、当日の31日には、各社が前日比+7〜9%と大幅高となったが、5大商社で最も高い時価総額を有する伊藤忠商事は前日比+4.19%と、出遅れ気味となった。
なぜ、バフェット氏は日本の商社に目をつけたのだろうか。そして、伊藤忠商事の株価が出遅れ気味となった背景にはどのような要因があるのだろうか。
コロナで商社の王者は伊藤忠に?
伊藤忠商事の株価上昇が他四商社と比較して出遅れた背景としては、それまでに株価が高騰していたこともある。
この度の株価急騰は、バークシャー・ハサウェイの買いそのものではなく、その発表に乗じた他の市場参加者や個人投資家による期待先行の買いという要因で引き起こされている。そうすると、株価がすでに高くなっている伊藤忠商事よりも、他の総合商社に買いを入れた方が利ざやを期待できると考えた結果、伊藤忠商事に買いのフローが入りにくくなっている可能性がある。
5大商社の株価推移を比較してみると、3月のコロナショック以降で最も株価を上昇させているのが伊藤忠商事であり、コロナ前の株価を超えているのは5大商社の中で伊藤忠商事だけだ。
伊藤忠商事がいち早くコロナにおける株価下落から脱出した要因には、商社におけるビジネスの中身が他社とやや異なる点にあるといえるだろう。
3大商社がコロナで大打撃
伊藤忠商事の株価がここまで上昇した背景には、非資源ビジネスへの注力という側面が強い。
近年の商社ビジネスといえば、事業に投資をする持株会社としての側面も強まっている。
しかしながら、伝統的な収益源である資源やエネルギーの収益に占める割合は決して小さくない。これらのビジネスは、商品市況のブレが業績を大きく左右する特徴があり、今回の事例でリスク要因として発現したかたちとなる。
三菱商事は、19年度の第1四半期(1Q)に1612億円の連結純利益を計上したが、その半分以上である875億円が、「天然ガス」といったエネルギーや金属資源ビジネスから得たものである。一方で、20年度の1Qでは前期比603億円減となる272億円にまで落ち込んでいる。
三菱商事以外にも、三井物産や住友商事等、資源ビジネス比率が高い商社は、コロナショックによる資源価格の下落により打撃を受けた。特に、住友商事はコロナによるニッケル事業の操業停止とニッケル価格下落のあおりを受けて、およそ550億円の巨額減損処理を余儀なくされた結果、5大商社中で唯一、今期に赤字となってしまった。
一方で、丸紅・伊藤忠は純利益に占めるエネルギー・金属資源ビジネスの比率が低く、前年同期比の減益幅は小さい。その結果、今期に関しては財閥系の3大商社と、伊藤忠・丸紅の立場が逆転しつつあるようにもみえる。伊藤忠商事は5大商社で唯一、今期の純利益が1000億円超えとなっているが、これは盤石な非資源ビジネスの支えなしでは達成し得なかった業績だ。
その立役者は「情報ソリューション」(上図グレー部分)セグメントだ。当該セグメントは、同社の中でも高収益・高成長な伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)を筆頭としたもので、同社の1Qにおける純利益は前年同期比で+36.5%の40.6億円と大幅成長。その前年にも純利益を47.6%伸ばしており、同社ビジネスの中でも情報ソリューションビジネスが頭角を現してきているのだ。
伊藤忠商事は、先月26日にファミリーマートを完全子会社化に向けた公開買付を成功させた。生活や情報といった事業領域を拡大することで、より市況に左右されにくい商社モデルの構築を模索していると考えられる。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4f05c4440ba1019644daa5a3f0a880f1bcb129ab
「投資の神様」という異名を持つ、ウォーレン・バフェット氏がCEO(最高経営責任者)として率いる米国の投資会社「バークシャー・ハサウェイ」によれば、8月31日に三菱商事や伊藤忠商事といった、いわゆる「5大商社」の発行済株式総数の5%超を子会社で取得したという。
同社は、将来的には足元の2倍近い水準となる9.9%まで持ち高を高める可能性についても言及している。 コロナ前超えは伊藤忠だけ 5大商社の株価は、この発表が行われた31日以降、値上がりを続けた。
特に、当日の31日には、各社が前日比+7〜9%と大幅高となったが、5大商社で最も高い時価総額を有する伊藤忠商事は前日比+4.19%と、出遅れ気味となった。
なぜ、バフェット氏は日本の商社に目をつけたのだろうか。そして、伊藤忠商事の株価が出遅れ気味となった背景にはどのような要因があるのだろうか。
コロナで商社の王者は伊藤忠に?
伊藤忠商事の株価上昇が他四商社と比較して出遅れた背景としては、それまでに株価が高騰していたこともある。
この度の株価急騰は、バークシャー・ハサウェイの買いそのものではなく、その発表に乗じた他の市場参加者や個人投資家による期待先行の買いという要因で引き起こされている。そうすると、株価がすでに高くなっている伊藤忠商事よりも、他の総合商社に買いを入れた方が利ざやを期待できると考えた結果、伊藤忠商事に買いのフローが入りにくくなっている可能性がある。
5大商社の株価推移を比較してみると、3月のコロナショック以降で最も株価を上昇させているのが伊藤忠商事であり、コロナ前の株価を超えているのは5大商社の中で伊藤忠商事だけだ。
伊藤忠商事がいち早くコロナにおける株価下落から脱出した要因には、商社におけるビジネスの中身が他社とやや異なる点にあるといえるだろう。
3大商社がコロナで大打撃
伊藤忠商事の株価がここまで上昇した背景には、非資源ビジネスへの注力という側面が強い。
近年の商社ビジネスといえば、事業に投資をする持株会社としての側面も強まっている。
しかしながら、伝統的な収益源である資源やエネルギーの収益に占める割合は決して小さくない。これらのビジネスは、商品市況のブレが業績を大きく左右する特徴があり、今回の事例でリスク要因として発現したかたちとなる。
三菱商事は、19年度の第1四半期(1Q)に1612億円の連結純利益を計上したが、その半分以上である875億円が、「天然ガス」といったエネルギーや金属資源ビジネスから得たものである。一方で、20年度の1Qでは前期比603億円減となる272億円にまで落ち込んでいる。
三菱商事以外にも、三井物産や住友商事等、資源ビジネス比率が高い商社は、コロナショックによる資源価格の下落により打撃を受けた。特に、住友商事はコロナによるニッケル事業の操業停止とニッケル価格下落のあおりを受けて、およそ550億円の巨額減損処理を余儀なくされた結果、5大商社中で唯一、今期に赤字となってしまった。
一方で、丸紅・伊藤忠は純利益に占めるエネルギー・金属資源ビジネスの比率が低く、前年同期比の減益幅は小さい。その結果、今期に関しては財閥系の3大商社と、伊藤忠・丸紅の立場が逆転しつつあるようにもみえる。伊藤忠商事は5大商社で唯一、今期の純利益が1000億円超えとなっているが、これは盤石な非資源ビジネスの支えなしでは達成し得なかった業績だ。
その立役者は「情報ソリューション」(上図グレー部分)セグメントだ。当該セグメントは、同社の中でも高収益・高成長な伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)を筆頭としたもので、同社の1Qにおける純利益は前年同期比で+36.5%の40.6億円と大幅成長。その前年にも純利益を47.6%伸ばしており、同社ビジネスの中でも情報ソリューションビジネスが頭角を現してきているのだ。
伊藤忠商事は、先月26日にファミリーマートを完全子会社化に向けた公開買付を成功させた。生活や情報といった事業領域を拡大することで、より市況に左右されにくい商社モデルの構築を模索していると考えられる。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4f05c4440ba1019644daa5a3f0a880f1bcb129ab