ガコン!
……
もともとが静かだったその空間は、小柄な学生の突然の蛮行によって完全なる無音の砂漠と化した。
「な、何みてんだよぉ!」
ーーだってしょうがないじゃないか、イラストは気持ち悪いし、ゴロだってそこらへんの小学生に10秒くれてやって作らせた方がよっぽどかましな駄作ばかりじゃないか。
儲かるのかしらんが真面目な学生の貴重な小遣いをこんなガラクタ売りつけて巻き上げるとは外道の極みだ!やっぱりフォーミュラ600を買えば良かったんだ。二択を突きつけられると必ず間違いをe……
「あ…あのぉ!!」
ーーん?
「結城くん…だよね?」
彼の怒りが作り出した醜い静寂は、決して混じり合う事のない透き通った風を拒絶し慌てて換気口から逃げ出した。
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「結城くん…だよね?」
俺の竿を持って、そいつはそう聞いてきた。
「違います」
俺がそう言うや否や、そいつは俺の竿を引っ張り、洗い場に連れ出すと、皆の前で俺の陰毛を剃り始めた。
剃り終えると、周りにいた裸の男達は俺の体をまさぐり、俺は皆様のおもちゃになったのだった。おわり
「いえ、違います」
「え、あ、そうですか…ごめんなさい」
「すいません結城です。」
「えっ」
ーーなんだこいつ。
「今なに捨てたの?」
ーーいや、誰だよお前。ってか視線が痛い。俺のせいとはいえカオスすぎるだろ。
「…青チャートです。」
こんなちっぽけな嘘がありふれた灰色の人生を後に漆黒の闇に染め上げるのは稀有な例である
「今なんつった?」
ーーは?
「今、なんつった?」
女の子は蝶よ花よと育てられ、醜悪を知らず、美しいものにだけ触れて育ち、そして17.18で本物の蝶になるものだと信じて疑わない彼には、そのドスの効き殺意に満ちた声が目の前の蝶から発せられたものだと理解するには多大なる時間を要した。
そしてそんな時間は与えられなかった。
グサ
「んほぉおおおオ○コイグゥう!」
それは間違いなく彼が発したセリフであり、さらにそれ自体はごく自然、当たり前な現象と思われた。
なぜなら彼がこれまで勉学そっちのけで何百何千と読み漁ってきたイヤラシ作品の登場人物、とりわけヒロイン達は、男共の醜悪な欲望をその体に突き立てられた時には必ず全員がそのセリフを発していたし、
また彼自身にも丸められた蛍雪時代が後ろから突き立てられていたからである。
「あーあまたやられてるよ。」「青チャディスは絶対NGだって」「てかあのゴミ箱青チャ入んなくね?」「まーあいつもキチ○イだしいっか」「やべっ来週模試だった、勉強勉強っと」「ばかだよなほんとw」
ーーいでぇ。地雷ふんだの?俺、、
薄れていく意識の中で、やはり人は冷たくてとくに自分だけ厳しい生き物なんだと彼は再確認した。