中国はデジタル化やグリーン化に不可欠な重要鉱物の多くで圧倒的なシェアを握る。他方、先進諸国は重要鉱物の脱中国依存を図っている。こうした摩擦が各国経済に悪影響を及ぼす可能性に注意を要する。
■重要鉱物の供給で優位に立つ中国
経済安全保障が活発に議論されている。2020年以降、新型コロナの流行やロシアによるウクライナ侵攻で貿易取引が混乱し、製造業のサプライチェーン(供給網)を再構築する必要があるとの認識が高まっている。経済安全保障の議論で取りあげられる重要物資は、半導体、蓄電池、ロボット、医薬品といった工業製品に加え、LNG などのエネルギー資源など多岐にわたる。そのなかでもレアアースやリチウムなどレアメタル(以下、重要鉱物)は、ハイテク製品に使用されていることから、「デジタル化」にとって重要である。さらに、重要鉱物はバッテリーや高性能モーター風力発電のタービンといった電気自動車(EV)や再生可能エネルギー関連機器にも使用されており、「グリーン化」にとっても不可欠である。産業構造の違いなどから、各財の供給網確保の優先度は国によって異なるが、そのなかでも重要鉱物を最優先課題とする国は多いと言える。
重要鉱物は世界の様々な国・地域で採掘可能であるが、精錬・加工プロセスは中国に集中している。このため、中国が重要鉱物の供給網で優位に立っている。中国が重要鉱物の精錬・加工プロセスでシェアを高めた背景には、以下の三つの要因が挙げられる。
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