「チカ。好きだよ」
「チカも…好きだよ、果南ちゃん」
「千歌ちゃん、好きよ」
「梨子ちゃん。チカも好きだよ!」
「チカ…」
「果南ちゃん…」
「千歌ちゃん…」
「梨子ちゃん…」
「「好き」」
***
♪♪♪
私は桜内梨子。
静岡県の沼津は内浦で、スクールアイドルをやっています。
発起人は同級生の高海千歌ちゃん。
同じく同級生の渡辺曜ちゃんと共に三人で立ち上げ、今では一年生と三年生がそれぞれ三人ずつ加わって九人もの大所帯となりました。
控えめで目立つことなんてほとんどなかった私がスクールアイドルなんて、と当初は戸惑ったものだけれど。
ーー梨子ちゃん!
ーー梨子ちゃんと一緒がいいの
ーー梨子ちゃんのピアノ好きだな〜。
ーー梨子ちゃん、行こっ!
とっても強引な誰かさんに振り回されているうちに、やがてそんな気持ちは少しずつなくなっていきました。
今、私の胸の中に強くある想いは、純粋にたった二つだけ。
一つ、スクールアイドル『Aqours』として、この九人で目指せる限りの高みへと到達したい。
そしてもう一つ、私はーー千歌ちゃん、あなたのことがーー
♪♪♪
♪♪♪
「よ〜し、今日の練習はここまでにしよっか。各自クールダウンして解散〜」パンパン
「はーー、つっかれた〜」バタ
「うゆ…」バタ
「水分が…足りないずらあ…」バタ
「水分不足は危険よ…ほら、余ってるから飲みなさい」
「ありがとう善子ちゃん!」ゴク
「ヨハネ!」
「あはは、一年生はまだ体力が足りないな〜」
「果南さんがバケモノなだけで、私たちも結構ヘロヘロですわよ…」
「果南は七つの心臓と筋肉でできてるから。体力についてなにを言ったって暖簾に hyper push だよ」
「ちょっと、人をバケモノみたいに」
「いえ、みたいじゃなくてはっきり言いましたわよ?」聞いてなかった?
言ったなー?!
ちょっ…追いかけっこには付き合いませんわよ!
GO! GO! カナ〜ン!
鞠莉さん! 煽るのはおやめなさい!
「んっ…くう、疲れたなあ」ノビー
「梨子ちゃん梨子ちゃん!」ドシンッ
「きゃっ?! もう、千歌ちゃん! そんな風にしたら危ないわよ」
「えへへ…ごめんごめん。それより、明日ね、よーちゃんと遊びにいくんだけど、梨子ちゃんも行くでしょ?」
「ええ…なに、もう。突然ね」
「ねーねー梨子ちゃん、いいでしょー行こうよー」グイグイ
「あっこら伸びるから…わかったわかった、私も行くわよ」
「ほんとに?! やったー! よーちゃーん、梨子ちゃんも行くってー!」
「やりい! ナイス千歌ちゃん!」
「じゃあ10時に出て一緒に行こうね、梨子ちゃん」
「はいはい、わかったわよ。千歌ちゃんから誘ったからには寝坊なんて許さないからね。10時になっても出てこなかったら置いていくわよ」
「え? 起こしてくれないの?」クビカシゲッ
「起こしません!」
そんなあー! りーこーちゃーん!
肩をがしりと、ぐいぐい揺すられるけれど頷かない。
だめだめ、甘やかしたらすぐ調子に乗っちゃうんだから。
歌詞作りだって、いつもこんな風に甘えてきては引き延ばそうとするんだもの。
たまには毅然とした態度でわからせてあげなきゃね。
「ぶー…梨子ちゃんのいじわるー。いいもん、よーちゃんに起こしてもらおーっと」
「え?」
「よーちゃーん、明日8時に起こしてー!」
「ちょ、ちょっと! それじゃ意味ない…」
「えー、またあ? まあ待ち合わせ時刻から待たされるよりはいいけどね」
「曜ちゃん! 千歌ちゃんを甘やかさないで!」
「やばっ、梨子ちゃんが怒った!」
「逃げろー!」
「こら、待ちなさーーい!」
「…あの人たち、いつも元気ね」
「ずらあ…」
♪♪♪
♪♪♪
「おはよー梨子ちゃん!」
「おはよう。ちゃんと起きたわね」
「必死だったよー…美渡姉と志満姉の目覚まし時計借りてやっとだったんだから」
「それでも10分くらい鳴りっ放しだったものね」
「梨子ちゃんが起こしてくれないからだよ!」
「人のせいにしないで。学校の日はちゃんと起きてるじゃない」
「学校の日はほら、起きないとだめだから…」
「友達と約束した日だって起きないとだめよ」
「心の広〜い梨子ちゃんと曜ちゃんのこと、チカがちょっと寝坊しちゃったくらいで怒ったり見捨てたりしないって信じてるから…」
「バス来ちゃうわ。行きましょう」
「あー! 聞いてよー!」
♪♪♪
♪♪♪
「おはよーよーちゃん!」
「おはよう、曜ちゃん」
「千歌ちゃん、梨子ちゃん、おはヨーソロー!」ビシッ
「チカちゃんと起きたよ! どう? えらい?!」
「よーしよし、偉いぞーちかちゃん」ナデナデ
「えへへー」
「また甘やかして。待ち合わせ時刻に間に合うように起きたことのどこが偉いのよ…」
「まあまあ梨子ちゃん。ここは私の顔に免じて」
「まさか曜ちゃん、こっそり起こしたんじゃないでしょうね」
「あ、あらぬ疑いだよ! ほら、電話の履歴見る?! いや見て!!」
「うーん…ほんとね。連絡した形跡はないわ…」
「もーっ! どれだけチカのこと信頼してないのーーっ!」
♪♪♪
♪♪♪
「よーちゃん! これ被ってみて!」
「おっ、いいガラだね! …どうかな?」
「おお〜っ、やっぱり似合う〜! ね、梨子ちゃん」
「ええ。その柄、すごく曜ちゃんらしくていいわね」
「ほんとに? へへへ…じゃあ買っちゃおっと」
「よーちゃんお買い上げー!」
「…ちかちゃん、このお店の回し者とかじゃないよね?」
「千歌ちゃんなら有り得なくないわね…」
♪♪♪
♪♪♪
「梨子ちゃん右! 右! あっあっ行き過ぎ行き過ぎ!」
「ち、千歌ちゃんうるさい! 私だってこのくらい取れるんだから…」
ヒョイ ウィィン… ポロッ
「あああ〜〜〜!」
「もーーっ! 千歌ちゃんのせいよ!」
「えーー?! チカ応援してただけなのに!」
「惜しかったよ、梨子ちゃん。次は取れるって」ドンマイ!
「そう言いながらもう800円よ。もしかして曜ちゃんはここの回し者…って、なにその量」
「いやあ〜、やるやつやるやつみんな取れちゃって」こんもり
「私もうゲームやめるーーーっ!」エーン
「あー、よーちゃんが梨子ちゃん泣かせたー」
「えー」
♪♪♪
♪♪♪
「梨子ちゃんなに見てるの?」ヒョコ
「五線譜ノートよ。作曲に使うの」
「へ〜! チカ音符だめだからなあ」
「千歌ちゃんは作詞担当なんだから、音符はそんなに強くなくていいでしょ?」
「でも、音符がわかったら少しは梨子ちゃんのお手伝いできるかもなーって、たまに思うの」
「千歌ちゃん…」
「梨子ちゃん…」
「…その気持ちは嬉しいけど、早く次の歌詞もらえる?」ジト目
「あーっ、だめだー! ごまかせなかったー!」アウチッ
「そんなことだと思った。まったく…あんまり遅くなると、また歌の練習ばっかりの日々が来るわよ」
「やだー…喉もたないよー…」
「だったら早く上げてちょうだい」
「ぶー」
♪♪♪
♪♪♪
「…ふう。疲れたねー」
「そうね。アイスの冷たさが心地いい」
「ちかちゃんは相変わらずパワフルだよね」
「今はなにしてるのかしら」
「駄菓子屋さん覗いてくるって走ってったよ」
「アイス食べてからでもいいのに」
「だよね」
「おーーーい、よーちゃーん! りこちゃーん!」
「あはは…呼ばれたね」
「ゆっくりアイスも食べられないのね」
「行こっか」
「うん」
♪♪♪
∬∬∬
「あ〜あ…」
「大きな溜め息ですわね。どうかなさいましたの?」
「最近、チカが遊んでくれないなーってさー」
「ふふ。私から見ても、千歌さんは曜さんと梨子さんにべったりですものね」
「小学生の頃はさー、曜と二人揃って『果南ちゃん果南ちゃん』って、そりゃあ可愛かったんだよ」
「はいはい、何度同じ話を聞かせますの? もう、一言一句たがわず暗唱できてしまいますわ」
「だあってさー」
「わかってますわよ、」
「「お姉ちゃんは寂しいよー」」
「…ほら、ね」
「ほらねじゃないよー。そこまでわかってるんだったら、なんとかする方法一緒に考えてよ」
「次は何度同じ話をさせますの? 一言一句たがわず暗唱できるでしょうに」
「わかってるけどさ、」
「「だったら自分から誘えばいいんですのよ」」
「ほーら」
「ほーらじゃありませんわ。マニュアルを覚えたのなら実行なさいな」
「…ダイヤのスパルタ」
「愛する子には旅をさせよ、ですわ」
∬∬∬
∬∬∬
「………」
『チカ』の文字を見詰めて、ダイヤの言葉を思い出す。
ーーだったら自分から誘えばいいんですのよ。
いや、思い出すまでもない。
本人が言うように、それこそもう何十回、何百回言われたか知れない。
思い出すまでもないし、言われるまでもない。
たった四文字、『遊ぼう』と打って送信ボタンを押してスマートフォンを放り投げるだけ。
それだけのことで、きっと明日にはチカと楽しい休日を過ごせるのだ。
だけど。
『チカ明日あそぼー』
「…それができるなら苦労してないって」
溜め息と一緒に削除ボタンを連打する。
いつからこんな風だっただろうか。
昔は、チカに会いたいと思うことなんてなかった。
会いたいと思わなくても、会おうとしなくても、ほうっておけば自然に会う相手だったから。
それにあの頃は、チカは曜と同じ。
可愛い可愛いただの妹だった。
それがいつからか、そうではなくなった。
ーー果南ちゃん!
ーーすっごい果南ちゃん! 今のどうやるの?!
ーー果南ちゃんのダンス格好いいよね〜。
ーーがんばろうね! 果南ちゃん!
中学に上がって一年離れ。
高校に入って一年離れ。
休学し始めて一年離れ。
やがて再会したときには、もうチカはチカではなくなっていた。
それは高海千歌の変化だったし、松浦果南自身の変化だった。
何年ぶりかに真っ正面に立ったとき、チカの変化を感じた。
なにをするにも誰かの後ろで、周りの様子を窺って、だめだと感じたらすぐに手を引いて。
そんなチカはもうどこにもいなかった。
瞳に強い光を宿して、目指すほうをただまっすぐに。
先頭切って、胸を張って、仲間の手を引いて。
そんなチカに出逢ったときからかもしれない。
私にとってのチカが、ただの妹ではなくなったのは。
「…おまえが悪いんだぞ」
新品のようにぴかぴかのスマートフォンに悪態をつく。
「打って、送信して、返事待ってなんて、ややこしいんだよ。昔だったら『明日遊びにいこう』って言って『うん』で済んだのにさ」
ぽいと放り投げて、ごろりと仰向けに。
チカの笑顔と、ダイヤの言葉と。
ぐるぐる、ぐるぐる。
回って止まないこんな気持ちには、もう飽き飽きだ。
「あーーー、もう! 走ってこよ!」
髪をぎゅっと縛って、夜の内浦へと飛び出した。
∬∬∬
∬∬∬
「果南ちゃーんっ、明日どこか遊びにいこっ」ギュ
「チカ。どうしたの突然」
「起きたら迎えにいくから準備しといてね! じゃね!」タタタ…
「お、起きたら?! チカしだい過ぎない?! …って、行っちゃったし…」
「じゃあこの問題を…松浦」
「わかりません」
「よし。黒澤、答えてみろ」
「イチ ニッ サン シッ ヨン ゴー ロク ナナッ」パンパン
「梨子、少し走ってるよ。鞠莉は曜のほうに寄り過ぎ!」
「またね〜、果南」
「お疲れ様でしたわ、果南さん」
「うん。二人とも気を付けて帰りなねー」
「〜♪ 〜〜〜♪」カポーン
「ふわ…そろそろ寝ようかな…」モゾモゾ
「お休みなさーい」パチッ
「………………………えっ?! 私、チカに誘われた?!」ガバッ
∬∬∬
かなりこで千歌っち取り合うの?
G′s版設定かな珍しい
∬∬∬
「果南ちゃん、おはよー! …寝不足?」
「い、いや…ほら、チカが何時に来るかわからなかったから、早くから起きて待ってたんだよ」目ギンギン
「そっかー。ごめんね、遅くなっちゃった」
「平気だよ。今に始まったことじゃないからね」
「えへへー」テレテレ
「誉めてないぞー?」
「それじゃ行こっか!」
「ところで、どこ行くの?」
「決めてな〜い」
「えっ」
「最近、全然果南ちゃんと二人の時間ってなかったでしょ。だから、なんでもいいから一緒に過ごしたかったの」
「チカ…」
「ね、行こっ。お散歩だけでもいいから」
「…うん、行こうか」
∬∬∬
∬∬∬
テクテク…
「果南ちゃんってすごいよね」
「へ? なに、突然」
「果南ちゃんって、ダンスのリズムとるとき七拍子でしょ?」
「そうだっけ」
「うん。でね、チカいっつも思うんだ。私だったら七拍子でこんなに上手にリズム取れないなーって」
「そう? たいしたことしてないよ。普通、普通」
「そんなことないもん、すごいもん!」
「誉めたって練習メニュー減らしたりしないぞ〜」
「ちぇー………って、そんなつもりなかったよ!」
「ほんとに〜?」
「ほんとだもん。ねね、リズム取るのやってやって!」
「ここで?!」キョロキョロ
「聞きたいのー!」
「意味わかんないよ…まあいいけど。やるよ」
「うん!」
「イチ ニッ サン シッ ヨン ゴー ロク ナナッ」パンパン
「うんうん、これこれ。やっぱりすごいなー…チカにはできないなー」
「ふふ。こんなので喜ぶなんて、変なの」パンパン
∬∬∬
∬∬∬
ザァァァ…
「果南ちゃんって、海みたい」
「へ? 私が?」
「うん。あ、でも逆なのかな。海が果南ちゃんみたいなのかも」
「それは随分荷が重いな〜」アハハ
「チカの思い付きをなんでも受け止めてくれて、いつでも変わらずにそこにいる大きな存在で、そして青い」
「青いってなに」
「果南ちゃんのイメージカラー?」
「髪の印象に引っ張られてない?」
「えー…うーん、そうかもしれない」
「適当だなあ」
「そんなことないよ。落ち着いてて大人っぽくて、深い青色のイメージだよ」
「自分じゃわかんないな。それと、海が青いとは限らないよ」
「え?! そうなの?! でも見て、青いよ!」
「今はね。でもほら、夕方は赤いでしょ」
「あ、そうだね」ナルホド
「それと一緒。海がいつだって青いわけじゃないように、私もいつだって青いわけじゃない。…あるいは、本当は、青くなんか全然ないんだよ」
「へ? どーゆーこと?」
「ふふ。なんとなく、それっぽいこと言ってみただけだよ」
「えーー、果南ちゃんらしくなーい」ブー
「お?! 言ったな? どういう意味だそれは〜っ」ウリャウリャ
「きゃー! あはは、やめてよ〜っ」
∬∬∬
∬∬∬
「チカ、最近はずっと曜と梨子と一緒だよね」
「うん! 一緒にAqoursやってるからっていうのももちろんあるけど、なによりよーちゃんと梨子ちゃんが大好きだから!」
「花丸たち一年生とか、私たち三年生のことは大好きじゃない?」
「そんなわけないじゃん! みんな大好きだよ! でもね、…ちょっとだけ特別だから」エヘヘ…
「ーー!」ドキッ
「特別…か」
「うん。よーちゃんは昔っからの一番大切な友達だし、梨子ちゃんだって、まだ知り合ってから長くないけど、おんなじくらい大切だから」
「昔っから……って、私も曜と同じくらいの付き合いなんだけどなー?」ジト
「へ?! だ、だから果南ちゃんのことも大切だよ! 大好きだからね?!」
「あーあ、傷付いちゃった。淋しいなー」
「だーかーら〜、違うんだってばーー!」ワーン
「へへ…冗談だよ。わかってるって」ヨシヨシ
「うう…果南ちゃんのいじわるー」
「でもやっぱり、特別な相手は…特別だよね」
「…うん。そうなの」
ーーーーズキ…ズキ…
∬∬∬
***
「さ、花丸の番だよ」
ガサゴソ ヒョイッ
「201号室ずら」
「ワオ! マリィと同じ部屋だね、ハナマル!」
「ルビィも!」
「よろしくね、マリちゃん。ルビィちゃん」
「あとは…善子、まだでしょ」
「ヨハネよ! 魔手により導かれし運命の相手は…誰だーっ!」バッ
「203号室だって、善子ちゃん」
「あら。私と同じ部屋ですわね」
「げっ…」
「今、『げっ』っておっしゃいました?」
「言ってません」
「ねえ…鞠莉さん…後輩から避けられてますわ…」イジイジ
「さ、避けてないわよ! そんなんじゃないわよ、大丈夫!!」アセアセ
「よーしよし。二人とも black hair だから仲良くなれるヨ」
「私はただみんなと仲良くしたいだけなのに…」イジイジ
「だからごめんなさいってば!! …っていうかその理屈なに…」
「あとは果南ちゃんだけだね」
「うん。でも、もう引くまでもなくわかってるね」
「あ、そっか。まだ一人しか決まってない部屋があるもんね」
「そういうこと。だから必然的に私は204号室に決まりで、相方はーー」エーット
「あ、はい。私です」ノ
「梨子か。よろしくね」
「よろしくお願いしますっ」
「あはは、そう堅くならないでよ。仲良くやろうね」ニコッ
「はいっ」ニコッ
チラッ チラッ
ーーやったー、よーちゃんと一緒〜。
ーーナイスくじ運、だねっ!ゞ
「……………」
「……………」
***
***
「じゃ、まずは10kmランニングね! ゴー!」
「ハードな合宿になるね…よし、がんばろーっ!」
「イチ ニッ サン シッ ヨン ゴー ロク ナナッ」パンパン
「ルビィ、今のステップ今までで一番いいよ! 忘れないで! ダイヤは二歩目の踏み込みを気持ち浅めに!」
「15分きゅーけー!」パンッ
「はあああーー…疲っかれたーー」バタ
「まだ前半メニューしか済んでないなんて…」バタ
「ここでお互いに背中を向け合うわけだからさ、その前にもう一歩ずつ左右に行っておいたほうがーー」
「それではリズムが足りませんわ。踏み出しが早くなると周りとずれますしーー」
「両方やってみるから見てて! まず踏み出しを早めるほうをーー」
「アーーーーーーーー……ッ、ぅふう…」
「38秒。かなり伸びたね!」
「声の出し始めで息を使い過ぎてるように見えるわ。吐きながらお腹を膨らませるようなイメージでーー」
***
♪♪♪
「ハイ、じゃあ今日の練習はおしま〜い」
その声を皮切りに、今度こそ全員がバタバタと倒れる。
全身を地に預ける格好こそなんとか回避したものの、膝はがくがく、私もへたりとその場に座り込んでしまう。
(相変わらず果南さんの体力は凄いなあ…)
控える夕食のことも忘れてスポーツドリンクを流し込みながら、ただ一人早くもクールダウンに入る果南さんを見詰める。
膝が笑っている様子もないし、そもそも呼吸が乱れているようにも見えない。
同じ高校生でもここまで体力に差が出るものかしら。
…とは言え、残る二人の三年生を見るに、やっぱり個人差が大きいのかも、と思い直す。
最後の一滴まで渇いたことを確認して、名残惜しいながらもペットボトルを口から離す。
うん、いくらかマシになった。
ただ、それじゃあクールダウンを始めようという気にはまだなれず、瞳は自然に彼女をさがす。
ーーちかちゃん重いよー。
ーーよーちゃんの膝気持ちいーなー。
ーー聞いてるかなーちかちゃーん。
ーーここになら住めそー。
ーー雨風しのげないよー。
「……………」
ズキン。
胸に痛み。
練習が終わったとき、曜ちゃんのほうがたまたま近くにいた。
このあと部屋が一緒だから、なんとなく甘えるのにちょうどよかった。
そもそも昔からそういう付き合いで、特別なことなんかなにもない。
ーーどれだけ理由を重ねてみても、治まることはなくて。
どうして、私じゃないのかな。
羨望か嫉妬か、はたまた自己嫌悪か。
いたたまれなくなって目を逸らす。
逸らした視線の先には再び果南さん。
長座体前屈、ほぼほぼクールダウンも終わり気味の様子。
もう消え掛かる夕陽に照らされる横顔。
真一文字に口を引き結んで。
柔和な雰囲気を帯びた垂れ目に映える、長く凛としたまつ毛。
(…隣でクールダウンご一緒しようかな。部屋も一緒だし)
まだまだ休息不足を訴えてくる両脚を奮い立たせる。
千鳥足に、苦笑い。
体力作りに自主ジョギングでもしようかな、でもやり過ぎはよくないって日頃から果南さんたち言ってるしな。
バランスと物量も考え抜いてメニュー作りされてるんだろうしな。
その辺、今夜せっかくだから相談してみようかしら。
「ねえ、果南さん。となり…」
その先に続く言葉を、私は紡げなかった。
長座体前屈。
夕陽と横顔、引き結ばれた口元。
声を掛けられる距離まで近付いて、そして気付いてしまう。
口元はふるふると震え。
瞳は揺るがずただ一点を。
その先には戯れる千歌ちゃんと曜ちゃんの姿があって。
それこそたまたま。
どこを向いたって誰かいる。
けれど、そうじゃなくて。
揺るがない瞳の奥に宿る色が、私と全く同じだったなら?
爪先に向けて伸ばしているだけのはずの手が。
もっと向こう、オレンジ色の夕陽に向けられているようにしか見えなかった。
♪♪♪
***
「さ、できましたわよ。運んで運んで」
「よかったー…ダイヤさんの料理まともだあ」
「誰のほうを見て言ってるのかなーちかっち〜〜?」
「あ、ヒエッ、いや美渡姉のこと考えてただけで決して…」
「ふーん、美渡さん料理だめなんだー。へ〜」
「よ、よーちゃん?! 裏切りはやめて!」アワワ
「はいはい、遊んでないで食べますわよ」イタダキマ…
「ん〜、疲れた身体に美味しい匂いが沁みるずら〜」
「ダイヤの作る料理は美味しいからね。ほんと、料理担当を引き当ててくれてよかったよ…ほんと…」
「ムムーッ。カナンだって料理だめなくせにー」
「別に鞠莉がどうこうって言ってないよ。それとも、あれ? なにか心当たりでもあるの?」イシシ
「もーっ、みんなしてー!」
「食ーべーまーすーわーよーーー?!」
「おいしー!」
「ほんと。肉じゃがもすごく味が染みてて…ダイヤさん、朝から用意してくださってたんですか?」
「まさか。夏の日中に放置するわけにはいきませんもの。この時間で全てこしらえたんですのよ」
「そうとは思えないね」モグモグ
「煮終えたあと、火からおろして10分ほど蒸らすのがコツですわ。そうすることで柔らかくなるし味もより染みますの」
「さすがおねいちゃあ!」パクパク
「ルビィもいずれこのくらいできるようになるのよ?」
「ピギッ?! うゆ…まずは味を覚えるとこから…」パクパク
「それにしても、その…見事なまでの和食メニューよね」イチジュウサンサイ!
「善子〜。作ってもらった料理にケチつけるなんて失礼だぞ」
「そ、そういうつもりじゃなくて! 大人数分を作るんだから、カレーとかシチューのほうが楽だっただろうなって。和食って品数いっぱい用意しなきゃいけないから」
「それは、ねえ…」チラッ
「作った人が、ねえ…」チラッ
「?」
「…オホン。なんですの」
「ダイヤ、洋食はほとんどからっきしだから」
「そうそう。食べるほうも作るほうもね」
「あ、そういえば…ハンバーグ嫌いなんだっけ…」
「なんですのその目は。誰にだって苦手な食べ物の一つや二つありますわ。善子さんだってみかんが苦手でしょう」
「そりゃ、まあ」
「みかんはねえ。たまに嫌いな人いると思うけど」
「ウンウン。猫だってそうだし」
「でもハンバーグはねえ。あんまり聞かないよねえ」
「もしかしてお家柄?」
「なるほど。ルビィ、ハンバーグは好き?」
「うゆ? うん! だいすき!」
「ありゃー…」
「これは…」
「もう! 二人ともなんなんですの! 言いたいことがあるならはっきりとおっしゃいなさいな!」
「うわ、ダイヤが怒った!」
「oh, 怖い怖い。おとなしく食べましょ、カナン」
「ムキーーッ、なんなんですの〜〜〜っ!!」
「…この人たち、いつも元気ね」
「うゆ…」
***
♪♪♪
「お風呂あがりました」
各部屋に備え付けのシャワー室。
小原グループ経営のホテルのこと、当然ながら下には大浴場もあるけれど。
内浦に来てからは千歌ちゃんのお家でお湯を借りることがまあまあの頻度であるからか、そう惹かれもせず、手軽な一人風呂で済ませてしまった。
千歌ちゃん、曜ちゃん、果南さんも同じようにしたところを見るに、ここらへんの心中は似たようなものなのだと思う。
…と、返事がない。
飲み物でも買いにいっているのかな。
「果南さーん?」
いた。
海に面する窓を全開にして、ベッドに腰掛け夜空を。
半乾きでおろされた長髪、どこか憂いを帯びた瞳。
綺麗な輪郭をしてるんだな、なんて、ぼんやりと。
「…あ、梨子。あがったんだね」
「あ、はい」
「どした? ぼーっとして。こっちおいでよ。一緒に星見よう」
「ぜひ」
失礼します、と隣に。
にかっと歯を見せて笑い掛けてくる。
「髪、乾かさないんですか?」
「うん、夏だし」
「冬は乾かすんですか?」
「面倒くさいから、あんまり」
「もう、そんなんじゃ傷んじゃいますよ。ただでさえ毎日塩水に浸かってるのに」
「へへ…」
「誉めてませんからね? はい、向こう向いてください」
「へ?」
「ドライヤー掛けますから」
ヴォォーーーン…
髪を乾かすのなんて毎日のことなのに、ひとたび他人の髪となると全く違う行為のよう。
角度が違えば感覚も違い、当然といえば当然のことか。
ドライヤーの音で掻き消されるけれど、果南さんはどうやらご機嫌の様子で鼻唄。
こうしていると、まるで妹になったみたい。
「…はい、おおかた乾きましたよ。あと気になるところはタオルかご自分で」
「ありがとー、梨子。……うん、充分だね!」
「もうちょっとしっかりしてくださいね、姉さん」
「ねえさん?」
髪の内側をぐにぐにと揉んで満足そうな笑顔が、好奇心半分、疑問半分の表情になる。
「髪を乾かしながら思っちゃって。お姉さんみたいだなって」
「梨子が?」
「いえ、果南さんが」
「ふふ…変なの。普通、お姉ちゃんが妹の髪を乾かすでしょ」
「あら。お姉さんのほうがだらしないと、そうばっかりでもないと思いますよ」
「あっ、言ったなー?」
「ふふ…言いましたよー」
うりゃうりゃー、と頬をむにむに。
「ふぁなんふぁん、やめへ〜」
「生意気な妹にはお仕置きするもんなんだぞ」
口でやめてと言いつつ(言えてないけど)、しばらくされるがままになる。
姉妹っていたことないから、こういうの新鮮だな。
あ、でも…ちょっと待っ…
「ふぁ、ふぁなんふぁん! ひたい! へっほーほんふぉにひたい!」
「あっ、ごめん」
腕を叩いて抗議。
すぐにぱっと離される。
「あはは…やり過ぎたかな」
「さすが、力が強いです…」
「楽しくって、つい」
責める気もなくなる、無邪気な笑み。
責める気なんて、元々ないけれど。
ドライヤーを片付けて、再び隣に座り直す。
横目に私を気に掛けてくれつつ、視線はまた星空へ。
倣い、視線を送る。
星座には明るくないけれど、夏の大三角くらいは知っている。
果南さんは、同じ星空をどんな想いで見ているのかな。
「千歌ちゃんのこと、考えてます?」
「えっっ?!!」
最初は単純な驚きの色。
次いで、信じられないという風に目が見開かれて。
さあっと朱が差す。
「な、なん、な、なんでっ、ちがっ」
「わかりますよ。だって、私も同じですから」
「別に、わた、わたしは…………え…」
微笑んで返す。
「私も、好きなんです。千歌ちゃんのことーー果南さんもそうでしょ?」
目は真ん丸に見開かれ、口は不格好にぱくぱくと動き、やがて、その全てがわずかな曇りに包まれた。
「そっか、おんなじなんだ。梨子も」
「…はい」
「チカのこと、好きーーなんだ」
「…はい」
確かめるような一言ずつに、ただ頷く。
「そっかー」
ぼふ、と背中から布団へ倒れ込んで、また一言。
「…きついね」
「…はい。きついです」
「ね、梨子。私たちって、ライバルなのかな?」
「え。…どうでしょう、ライバルってことはないような」
「そうだよね。戦い合えてもいないもんね」
「そうですね」
「言っちゃなんだけど、曜の一人勝ちだもんね」
「…そうですね」
決して、曜ちゃんが嫌いなわけじゃない。
憎いわけでもない。
ただ、ただ、厳然たる事実として。
友人同士のものじゃなくて、幼馴染み同士のものでもなくて。
あの二人の間にある確かな『絆』に、私のーーいや、私たちの入り込む余地など残されていない。
それがわかってしまっているだけのこと。
だからこそ、戦おうという気にすらさせてもらえない。
後ろ手に縛られているわけでもないのに、自ら正しく座して、目の前で繰り広げられる絆の遊戯を、ただただ眺めている。
「もう寝る?」
「まだ寝ません」
「チカが足りないと思わない?」
「ここ数週間、足りてないです」
「私、小さい頃のチカのこと、いっぱい知ってるよ」
「私は同級生としての千歌ちゃんをたくさん知ってます」
「………………」
「………………」
「…よし、ジュース買ってこよっか! 今日は奢るよ」
「いいんですか? ふふ、甘えちゃおう」
「行こ!」
「はい!」
♪♪♪
***
「よーし、柔軟に移るよー。二人か三人になってー」
「よーちゃん、一緒にやろ! ね、梨子ちゃんも…」
「あ、私はいいわ。果南さーん、やりましょう」タタタ…
「最近、梨子ちゃん果南ちゃんに懐いてるね」
「そうだね…今週に入って、梨子ちゃんと一回も柔軟やってないなあ」
「まあまあ、ちかちゃん。みんなが仲良くなるのはいいことだよ」
「ん〜〜〜っ、わかってるけどーー!」ジタバタ
「わかるよ。友達と幼馴染みが同時に取られちゃって、淋しいんだよね」
「そんなんじゃないけどー…そうだけどー…」
「どうどう。さ、柔軟始めよ!」
(二人でいるとき、果南ちゃんも梨子ちゃんも随分幸せそうだな。もしかして、付き合ってるのかな?)
***
***
「それでね、チカってば別れたあと30分もしないうちに走って私ん家訪ねてきたからどうしたのかと思ったら、『ガム飲み込んじゃった、どうしよう。チカ死んじゃうの?』って!」
「か、かわ…っ、かわわわ…」//
「しかも追っ掛けてきた曜が言うに、それガムじゃなくてチューイングキャンディだったんだよ!」
「〜〜〜〜〜〜っ!!」キュンキュン バシバシ←果南たたいてる
「あれは可愛かったなあ。今でもチューイングキャンディ見るたびに思い出しちゃうよ……はい次! 次、梨子!」
「はあ…はあ…は、はい。私の番ですよね。あれは5月だったかな。千歌ちゃんが遅刻してきた日があったんです」
「うんうん」
「一時間目の途中で教室にこっそり入ってきて、先生は黒板のほうを向いてたから気付かなかったんですけど、千歌ちゃん自分の席に座らずに私のとこまで来たんです」
「へ? なんで?」
「それが! 『見付かったら怒られちゃうからここで授業受ける』って言って、私の膝にノート広げ始めたんです!」
「んなあっ?! か、わ、い……」ワナワナ
「しかも、結局あっさり見付かって余計に怒られちゃって、意地になって『ここが私の席です!』って私と無理やり椅子を半分こにして最後まで授業受けちゃったんです!!」
「えええ?! そ、それ…」
「はい。授業が終わってから職員室に連れていかれました」
「ばか過ぎー! でもかわいーなーもう!」バシバシ
「あっ、ちょっ痛っ、果南さんはだめっほんとに痛いっ」
「あっごめん…興奮し過ぎた」
「もう慣れました…いいから、次! 果南さんの番ですよ!」
「うん。雪で学校が休みになって、曜と三人で遊んだ日があったんだけどね……」
***
♪♪♪
私と果南さんは、合宿の日の夜からお互いが持つ千歌ちゃんの情報ーー千歌ちゃんとの想い出を、代わりばんこに聞かせ合った。
内浦のことを知りもしなかった昔。
何小学校に通っていたのかも知らない千歌ちゃんのこと。
果南さんが話して聞かせてくれるたびに、私は一歩ずつ千歌ちゃんの傍に行ける。
出会ってもいない、知り合ってもいない。
幼い日の千歌ちゃんと、だけれど、いつしか私は同じ時を過ごすことができていた。
果南さんも同じ。
自身が休校に入り、すれ違いざまにだって知ることができなくなった学校での千歌ちゃんの様子を。
最も近い場所で見てきた私が話して聞かせることで。
願っても祈っても叶わない、クラスメイトとして過ごすことができる。
私たちが望んで止まない時間を、二人でいれば手に入れられる。
チカはね、千歌ちゃんがね、チカのね、千歌ちゃんとね、チカからね、千歌ちゃんだけね、チカってばね、千歌ちゃんったらね、チカ、千歌ちゃん、チカ、千歌ちゃん、チカ、千歌ちゃん、ちか ちか ちか ちか ちかちかちかちかちかちかーーーー
高海千歌が、そこにいなくても。
♪♪♪
♪♪♪
『りーこちゃんっ。今いい?』
スマホの画面に表示されたポップアップ。
返信することなく、カーテンと窓を開ける。
このメッセージは、話そうの合図。
案の定、対岸にはもう千歌ちゃんが待っていた。
「ごめんね、勉強してた?」
「ううん、平気よ。どうかした?」
「明日の夜って空いてないかなーって」
「明日? …夜?」
「うん。ほら、花火大会」
「ああ、狩野川の」
「そう! よーちゃん誘って、三人で…どうかなって」
「そうね…花火大会…」
「予定ある? だめなら明後日でもいいんだけどな」
「…えっと、」
「果南ちゃん?」
「えっ」
少し声のトーンが変わった。
漂わせていた視線を正面に戻す。
訴えるような瞳と、交錯する。
もし、千歌ちゃんと行ったらどうだろう。
流行りのキャラクターのお面を着けて、はしゃいで回るだろうか。
右手にりんご飴と左手に綿菓子を持って、満足そうに笑うだろうか。
金魚すくいに夢中になって、浴衣をびしょびしょにしてしまうだろうか。
そして、私たちの名前を呼ぶのだろう。
ーーよーちゃん! 梨子ちゃん!
「………………」
「梨子ちゃん最近、果南ちゃんと仲良しだよね」
「え? ええ、そうね」
「合宿終わった頃からだから、もう…二週間くらいかな」
「そのくらいに、なるわね」
「教室では一緒だったけど、練習中はほとんど果南ちゃんといるし、お休みに入ってからも、あんまり遊んでくれなくって、でも梨子ちゃんと果南ちゃんが仲良しなのは嬉しいんだけど、でも、」
「チカ、ちょっと淋しい…」
顔は伏せられて、表情は見えずに。
けれど声は、少しだけ涙色をしていて。
思考の一部だけを割いてみた。
じゃあ、花火大会に果南さんと行ったらどうだろう。
………………………私は、
「千歌ちゃん。私、花火大会はーー」
♪♪♪
∬∬∬
『果南さん。狩野川の花火大会のことなんですけど』
『千歌ちゃんと、行きたくないですか?』
『二人きりで』
『それで私、考えたことがあって…』
∬∬∬
***
ー花火大会当日ー
「あれ? ちかちゃーん?!」キョロキョロ
「よーちゃーん! こっちこっちー!」
「いつの間にあんな…動かないで待っててねー!」カランカラン
「…はあ、やっと追い付いた」
「よーちゃん遅いよー」
「ちかちゃんが速いんだよ。なんで下駄でそんなに速く移動できるの?!」
「えー。足痛くなるから脱いじゃった」
「ええっ?! ちょ、裸足?!」
「はだしだよ!」
「だめだよ! ガラスとか踏んだらどうするの! 破傷風になるよ! ほら、履いて履いて」
「よーちゃんは心配性だな〜」アハハ
「いや笑い事じゃないからね?!」
「あ、お面屋さんだ! チカお面好きなんだ〜っ!」タタタ
「あっちょっ下駄ァ! 右足ィ! 待ってちかちゃ〜ん!!」タタタ…
***
♪♪♪
「あ…射的なんてやってるのね」
「り、梨子ちゃん射的とか好きなの…?」
「ううん、やったことないわ。千歌ちゃんはある?」
「えっと…あんまりないかも」
「それなら対等ね。勝負しましょう! おじさん、二人お願いします」
「えっ! や、やるの?!」
「あら、だめ?」
「だ…め、じゃないけど」
「なら決まりね。負けたらたこ焼き奢りよ」
「あ! ずるい、後出し!」
「勝負を始める前なんだから後出しもなにもないわよ。さ、千歌ちゃんからどうぞ」
「しかも私から?!」
「内浦の先輩として、お手本を見せてほしいな〜」
「関係ないし…梨子ちゃん強引…」
「さ、早く早く。まだまだ回りたいところはたくさんあるんだから、のんびりしてられないのよ!」
「うう…は〜い」
♪♪♪
∬∬∬
「チカ、なにか食べたいものとかある?」
「ううん。果南ちゃん…と、おんなじものがいい」
「おっ、可愛いこと言うなあ。へへ…じゃあお腹も減ってることだし、最初は焼きそばかな〜」
「うん! 焼きそばならさっきあっちで見たよ! 久し振りだな〜、お祭りの焼きそば」
「よく見てるねー。私はこんな人の群れじゃ、流されないようにするので精いっぱいだよ」
「海なら流されもしないし、魚の群れと一緒になって自由に泳ぐのにね」
「ほんとだよ。ここもすいすい〜って泳いで回れたら楽なのになあ」
「ふふ、果南ちゃんらしい」
「あ、ばかにしたでしょ」
「してないよー」
「まったく。そんなんだったら、奢ってやらないぞ」
「えっ? 奢ってもらうつもりなんか、……あ、えー。ねーえ、果南ちゃーん」スリ
「うわっ、現金だなあ。ま、いいけどね。たまにはお姉ちゃんらしいことしてあげないとね」
「果南ちゃんはいつも優しいお姉ちゃんだよ」
「ふふ…チカはいくつになっても可愛いなあ」
∬∬∬
***
「ひとつくーださい! よーちゃんもいる?」
「ううん、私はいいよ。まだ焼きそばあるからね…って、ちかちゃんが右手に持ってるのはなにかな〜?」
「りんご飴!」
「両手とも塞がったら危ないよ」
「危ないときはよーちゃんが支えてくれるからだいじょーぶ!」
「私はスーパーマンかなにかなのかな〜」
「チカにとってはね」エヘヘ
「調子いいなあ。あ、あそこに座って食べよっか」
「うん!」
「お祭りってさ、毎年行くのに飽きないよね」
「そうだね。花火だって毎年見るのに飽きないもんね」
「綿菓子も」
「焼きそばも」
「りんご飴も」
「「毎年食べるのにね」」
「…ひとくちちょーだい、よーちゃん」
「ええっ?! その上でまだ食べる気?!」
***
♪♪♪
「あ」
「どしたの? 梨子ちゃん」
「千歌ちゃん、ああいうの好きそう」
「あー…好きかも…」
「よし、私が取ってあげるわ」
「え?! 梨子ちゃん、輪投げ得意なの?」
「ううん、初めてよ」ウデマクリ
「どうしてそう強気なのかなあ…射的だってチカの圧勝だったのに」
「 」カチーン
「…千歌ちゃん、本当は初めてじゃなかったでしょう。射的」
「へ? いやいや、初めてだってば」
「うーそ! じゃなかったらあんなに上手なわけないもの!」
「いや、私が上手かったというよりは梨子ちゃんが…あっなんでもないです」
「だから、次こそ思い知らせてあげるわ。私のほうが上手いってことをね」
「輪投げで?」
「輪投げで! おじさん、二人!」
「梨子ちゃんって結構負けず嫌いなんだなあ…」
「千歌ちゃん! ほら、やるわよ! 千歌ちゃんから!」
「ええーー?! またチカが先攻〜〜?!」
♪♪♪
∬∬∬
「あ! また割れた! なんでかな〜」
「果南ちゃんは力み過ぎなんだよ。こうやって力を抜いて丁寧に、丁寧に…」パキッ
「ぶふっ。チカも…割れてるし…」プルプル
「もーー!」ヒョイ パク
「また食べた。味しないでしょ、これ」
「そんなことないよ。変な味しておいしーよ」
「変な味なんじゃん…」
「でも、こうしてると思い出すなー」
「…あ、果南ちゃんいじわるな笑い方してる」
「だって、覚えてるでしょ? くく…っ」
「覚えてるよーだ。果南ちゃんが何回も掘り返すから!」
「型抜きしてる子の隣でじーっと眺めては、割れるたびに『それ食べていーい?』って…ねえ。知りもしない相手にも…」ププッ
「言わなくていーからー! 果南ちゃんなんか昔っから型抜き一回も成功したことないくせにー!」
「だーって性に合わないんだよ〜、こんなチマチマした作業」
「でも付き合ってくれるよね」
「チカも曜もなんかやりたがったからね、昔から」
「えへへ…果南ちゃんのそういう優しいとこ、好き」
∬∬∬
***
「とうっ!」ピャッ
「ひゃ! ちかちゃん、水飛んでる!」
「真剣勝負だから我慢して!」
「そのやり方を変えてくれれば…って、確かにすごく獲れてるんだけどさ…」
「むむむ…おまえで、20匹目だーーーっ!」パシャァッ…
「…あーーー! 破れたーーー!!」
「ポイ一つで19匹も獲れば充分だよ」
「あと2匹で記録更新だったのになー。あ、おじさん、金魚みんな返すね」ザバー
「ちかちゃん、金魚すくい大好きだよね」
「うん! 小さくて可愛いし、楽しいし」
「でも飼わないんだよね」
「うん! すぐ死んじゃうの、淋しいから」
「そんで、浴衣はびしょびしょだよね」
「うん! 今年もね!!」
「どうしてそこ嬉しそうに言うかなー。まあ、その姿を見るとお祭りに来たなーって感じするけどね」
「ねー、よーちゃんお腹空いてる?」
「今はそんなに。またなにか食べる?」
「ううん。チカね、あれやりたい!」
「あれ? …ああ! そうだね、やろっか!」
「「型抜き!」」
***
♪♪♪
「そういえば、あれ試してみない?」
「なに?」
「ほら、この間クラスで話題になったじゃない。かき氷の」
「あ〜! 実はみんなおんなじ味ってやつでしょ! チカも気になってたんだ」
「じゃあ決まりね。行きましょ」
「梨子ちゃん何味にするの?」
「あんな話を聞いた後じゃ、うきうきして選ぶのも複雑だけど…やっぱりイチゴがいいな」
「じゃあチカはみかんにするね!」
「じゃあって、私がなにを選んでてもみかんにしたでしょう?」
「そんなことないよ。梨子ちゃんがみかんにしたらメロンにしようと思ってたもん」
「そもそも、みかん味なんてあるの?」
「いっつもシロップ10種類用意してるとこあるから、そこ行けばあるよ!」
「さすが、詳しいのね」
「内浦の先輩だから!」ドヤッ
「さっきは否定したくせに」クスクス
「いーの! さ、行こっ!」ギュ
「あ……うん」//
♪♪♪
∬∬∬
「いや〜、だいぶ遊び回ったねー」
「そうだね…結構へろへろだよ〜」
「情けないなー、チカ。毎日の練習で体力ついてるでしょ」
「果南ちゃんと比べられたら体力なんて無に等しいよ…それに、こんな人混みあんまり慣れてないから…」
「…………それなら、手繋いでよっか」ギュ
「うん…えへへ、これならはぐれなさそう」
「チカは目を離すとすぐどっか行っちゃうからなー」
「あー、またチカのこと子どもみたいに言ったー!」
「私からすればチカはまだまだ子どもだよ」
「一つしか変わらないじゃん!」
「それでもだよー」ニシシッ
「もー…いいもん、いつか追い抜いてみせるもん」
「無理だよ?」
「無理じゃない! 果南ちゃんが二年間コールドスリープしてれば追い抜けるもん!」
「しないよ?」
「…あ、やっと少し人混み抜けたね」
「そうだね。こっちのほうは屋台もないからね。休むにはちょうどいいかも…」
「ねえ、果南ちゃん…」ムギュ
「えっ。ち、チカ…?」
「…あのね、私、そろそろ………。…もう、いいでしょ?」
「ああ…うん、そうだね……もうそんなに経ったっけ。そろそろ、する?」
「うん。したい。チカ、いっぱい我慢したよ…早く、」
∬∬∬
***
「でも残念だったね、梨子ちゃん」
「うん…内浦に来て初めての夏祭りだもん。一緒に行きたかったのにな…」
「果南ちゃんといるなら目立つと思うんだけどなあ」キョロ
「…こんなに人が多いんじゃ、さすがに無理かな」
「花丸ちゃんたちともダイヤさんたちとも会ってないもんね」
「小学生の頃は、毎年ちかちゃんと果南ちゃんと三人で来たよね」
「あの頃はずっと一緒だったもんね、私たち」
「そうそう。ちかちゃんは昔っから金魚すくいで何匹も獲ってたし」
「よーちゃんは昔っから最初は焼きそばって決まってるし」
「果南ちゃんは…型抜きがへたくそだったよね」
「だったっていうか、たぶん今もだよ」
「あー、よーちゃん果南ちゃんに言い付けちゃお〜」
「ちょっ! 裏切りだよ! 先に言ったのちかちゃんなんだからね?!」
「えへへー、しーらないっ。あーあ、よーちゃん怒られちゃうな〜」
「私だってちかちゃんが言ったって言い付けるからねー! …あ」
「よーちゃん? どうかした?」
「あれ、果南ちゃんたちだよね」
「え?! …あ、ほんとだ! あんな隅っこで…怪しいな〜。驚かせよ!」グイッ
「あ、う、うん…」
(なんか…不思議な雰囲気に見えるけど、気のせいかな…)
コソコソ
「間違いないね、果南ちゃんたちだ」ヒソ
「うん。もう少し近付けば声も聞こえちゃうね」ヒソ
「ん? なにしてるんだろ…」ヒソ
「果南ちゃんの髪を結ってあげてる? みたいだね」ヒソ
「仲いーんだね」ヒソ
「うん…そうだね…?」ヒソ
(でもなんか…単純に仲が良いってだけの様子でもないようなーー)
「さ、行きましょうか。千歌ちゃん」
「うん! そろそろ花火だからね、チカのとっておきの場所に連れてったげる!」
「「…………………え?」」
***
♪♪♪
「…あ、やっと少し人混み抜けたね」
「そうだね。こっちのほうは屋台もないからね。休むにはちょうどいいかも…」
ふう、と小さく息を吐く。
人に酔う…って、こういうことを言うのかな。
果南さんに手を引かれ、まるで幼い子どものよう。
でも、そんなことはお構いなしだ。
目の前の優しく逞しい腕にすがり付く。
「ねえ、果南ちゃん…」
「えっ。ち、チカ…?」
果南さんは呼ぶ。
私を見て、想い人の名を。
「あのね、私、そろそろ………。…もう、いいでしょ?」
「ああ…うん、そうだね……もうそんなに経ったっけ。そろそろ、する?」
もしかして、まだ少し早かっただろうか。
でも、もうこれ以上は待てない。
「うん。したい」
考えるだけで胸がぎゅうっと締め付けられる。
「チカ、いっぱい我慢したよ…」
私は呼ぶ。
自身に向かい、想い人の名を。
「早く、交代したいよーーーー」
ねえ、次はあなたが千歌ちゃんをやる番よ。
果南さん。
♪♪♪
∬∬∬
ー花火大会前日ー
スマートフォンがメッセージの受信を告げる。
「ん? 梨子かな」
最近は、毎日梨子とやり取りをしているおかげで少しずつ操作にも慣れてきた。
それにしても、梨子と過ごす時間は楽しい。
梨子は私が知らないチカをたくさん教えてくれる。
私は梨子が知らないチカをたくさん教える。
高海千歌という存在を求め合う私たちは、いつしかお互いにその影を重ねることで満足できるようになっていた。
「なにかなー…っと。そういえば明日は狩野川か。梨子は初めてだから楽しんでくれるだろうなー」
『果南さん。狩野川の花火大会のことなんですけど』
「おっ、噂をすれば。さすが梨子、耳が早いなあ」←まだ誘ってなかった
梨子から誘ってくれるなんて嬉しいな。
始まるのは夕方からだから、ちょっと早く集合して沼津でぶらっとしてからでもいいかなー。
なんて考えていると、再びスマートフォンが鳴動した。
あれ? 返事する前に来るなんて珍しい…な……
続くメッセージに、私は一瞬頭が追い付かなかった。
『千歌ちゃんと、行きたくないですか?』
『二人きりで』
立て続けに二通。
これは、えっと、どういう…
混乱する私に追い討ちを掛けるように、さらにもう一通。
『それで私、考えたことがあって連絡したんです』
『なに? どうしたの?』
これ以上、理解の外から攻撃される前に、せめてものカウンターを放つ。
だけど、そんなチンケな反撃に意味はなかった。
梨子はあっさりと私の想像を超えてきた。
『私たち、成りませんか。お互いがお互いの千歌ちゃんに』
∬∬∬
∬∬∬
最初は抵抗があった。
「あ…射的なんてやってるのね」
こんなの、すんなり受け入れられるほうがおかしいに決まってる。
「り、梨子ちゃん射的とか好きなの…?」
自分のものではない、大好きな人の口調を真似て。
「ううん、やったことないわ。千歌ちゃんはある?」
自分のものではない、大好きな人の名前で呼ばれる。
意味不明で恥ずかしくてばかばかしくて、ちょっとでも冷静になったらその場にしゃがみ込んでしまいそう。
私はなにをしている?
私たちはなにをしている?
それでも梨子は笑う。
優しく、可愛く、艶かしく。
その瞳には「千歌ちゃん」が映っている。
クラスでの話題ーーわかる。
授業での話題ーー返せる。
同級生の話題ーーーーその場にいたかのように話せる。
私は確かに、梨子の求める「千歌ちゃん」に成れる。
「…ああ、楽しい」
手洗い場の傍。
ふらりと立ち寄り、梨子は呟く。
そして名残惜しそうな表情で言う。
「それじゃ、そろそろ交代しましょうか」
「交代…」
「ええ。私ばっかり千歌ちゃんとデートするわけにはいかないもの。次は私が千歌ちゃんに成るわ」
「あ、その、梨子。やっぱり私はいいよ…」
「なんで? 果南ちゃん」
「…っ」
呼称だけじゃない。
彼女独特の抑揚、間伸び、クセ。
「チカと、お祭り回りたくない?」
首を傾げる角度、両手を後ろに組む仕草、はにかみ方、眉尻の下がり具合、上体を少しだけ近付けてきて、代わりに右足を少しだけ引いて、もう一度、私の、名前を。
「果南ちゃん」
「……チカと、回り…たい…」
∬∬∬
∬∬∬
そこからの時間は、まるで夢でも見ているかのようだった。
「チカ、なにか食べたいものとかある?」
目の前の友人を大好きな人だと思い込んで。
「ううん。果南ちゃん…と、おんなじものがいい」
ぎこちないなりの大好きな人が隣で私に笑っていて。
「おっ、可愛いこと言うなあ。へへ…じゃあお腹も減ってることだし、最初は焼きそばかな〜」
背徳と、罪悪と、羞恥と、困惑と。
現実感のなさと、それでも嬉しくなってしまう現実と、虚しさと、それを超えるだけの愛おしさと。
頭はくらくら、喉はからから、足元はふわふわ。
そして、胸はどきどき。
気が付けば、彼女はいつしか完全にーー彼女に成っていて。
「ふふ…チカはいくつになっても可愛いなあ」
∬∬∬
∬∬∬
「早く、交代したいよーーーー」
要請。
切実な声に、仕方ないなと笑う。
繋いでいた手を放して。
「じゃ、次は私がチカだね」
「あ…あのね、果南さん」
「ん?」
一瞬だけ挟まる現実を見逃すことなく、梨子はさらに夢への拍車を露わにした。
「髪、結ってみるなんてどうかな…千歌ちゃんを真似て」
「……それはいいね。やろうか」
想像しただけで、ふふ、頬がにやけてしまう。
虜、虜。
すっかり私を包んだ夢の背中を押す提案に、乗らない手はない。
「それじゃ、先に私が結ってあげますね」
「うん、お願い」
「嬉しいなあ。千歌ちゃんの髪を結うの、憧れてたのよ」
「………。うん、チカも梨子ちゃんに髪結ってもらえるの嬉しいなっ」
「ふふ。ほら、髪飾りもちゃんとあるんだから」
きらりと緑色。
果たして青い髪に映えるのかーーなんて。
「うん! とっても似合ってる。やっぱり千歌ちゃんにはこの髪飾りが一番似合うわね」
私の髪は、今は青くなどない。
そろそろ、花火が上がり始める頃だ。
「さ、行きましょうか。千歌ちゃん」
「うん! そろそろ花火だからね、チカのとっておきの場所に連れてったげる!」
「「…………………え?」」
声のしたほう。
聞き間違えるはずもない。
振り向けば、そこにはチカと曜の姿。
二人とも目を丸くして、まるで、
「あら、千歌ちゃん。曜ちゃん。こんばんは」
「やっほー、チカ。曜」
「あ、うん…えっと、気のせい…かな。聞いてもいい?」
「? ええ、なに?」
「今、果南ちゃんのこと『千歌ちゃん』って…それに、果南ちゃん自分のこと『チカ』って…」
「その髪型も…チカみたい…」
梨子ちゃんと顔を見合わせる。
案の定、私と同じ心境のようだ。
よかった、理解できない私が変なのかと思った。
改めてチカと曜に向き直る。
目を丸くして、まるで『理解できないもの』を見るかのような二人に。
「それが、どうかしたの? 梨子ちゃんがチカのこと『千歌ちゃん』って呼ぶの、そんなに変かな」
二人はーーなにも言わなかった。
∬∬∬
***
二人きりの部屋。
愛する貴女と私以外、誰もいない部屋。
「チカ。好きだよ」
「私も…好きだよ、果南ちゃん」
貴女の瞳には私だけが映っていて。
私の腕の中には貴女がいる。
「千歌ちゃん、好きよ」
「梨子ちゃん。チカも好きだよ!」
ああーー
大好きな貴女といられるだけで、私の胸はこんなにも。
「チカ…」
「果南ちゃん…」
「千歌ちゃん…」
「梨子ちゃん…」
二度と、二度と、誰にも渡さないよ。
だって私はこんなにも貴女のことがね、
「「好き」」
終わり
かなりこというカプの可能性について考えてたら、いつの間にかこんなものが出来上がった
ようちか+かなりこの明るい話は見たことあるけどこういうアプローチは新鮮で読んでて楽しかった
かなりこ良いね
楽しんでもらえたならよかった!
後学のために…
もっとこうだったらよかった、みたいなのがあったら教えてほしい
次回以降の参考にしたい
叙述トリックって言っていいんじゃないのこれ
途中まで千歌ちゃんが忙しなく3人取っ替え引っ替えでデートしてたのかと思ってたよ
キャラ名「セリフ」
にしなかったのはそのためかぁ
乙でした
うっとうしがられるかもしれないけど…
やっぱりレスに返信してもいいかな…
うざかったら読み飛ばしてもらえれば…
(>>1です) むしろレスしてくれ
こんな発想できる人の話ならいくらでも聞きたいわ
>>87
途中読んでてなんだこのポニテって思った
最後らへんで理解したw 何かドキドキして面白かったわ
個人的にもう少しちかりこ二人だけのシーンが欲しいと感じた。遊びに行ったの三人だったし。
屋上の練習中に梨子ちゃんが果南ちゃんの様子に気づくシーンは凄く良かった
何だろう、文章読んでゾワゾワってしたよw
これとは別に何かちかりことちかなんがイチャイチャするのも読みたい
うおおおお ありがとうありがとう…
こんなに誉められるばっかりだと思わなかった
みんなと会話できるのも嬉しい
>>80
かなりこってどういうカプになるのかな…って考えてたら、どうしてもその二人からは千歌を切り放せなかったんだ
アニメしか抑えてないからなのかな
間に千歌がいて初めて繋がる二人だとしか思えなくてね >>84
>>85
叙述トリック的なものを仕掛けたかったのは確かにその通りなんだけどね
でもラ!のキャラってみんな個性がしっかりしてるから、おれがちゃんと書き分けられさえすれば、よっぽど短い台詞とかじゃない限り名前は書かなくても判別つくだろうと思って。
実は単純に名前をいちいち打つのが面倒くさかっただけだったりもする… >>87
>>89
>>93
これは我ながらなかなか良いと思った//
もう好きなだけパクってくれたらいいと思う! 自分のアイディアが他の人の作品に活きるなんて、そんなの物書きの至上の喜びだよ!
果南ちゃんマークはなーんスレ見てて「これにしよ」って思った >>92
ありがとう
そんな風にまで言ってもらえると、書いたかいがあったよ
ss書いてる途中って疲れてだれたりしちゃうけど、読んでくれる人のこととか感想を貰えることを思うからこそ書き上げられるよ >>94
そっか そうだね
ちかりこ二人きりのシーンなかったな
ありがとう!
ちかりことちかなんのイチャイチャね、了解!
それはもうそれぞれ純粋なカプとしてのイチャイチャssってことでいいんだよね 歪んだ始まりでも最後はお互いをお互いとして愛するかなりこも見たかった
>>101
どっちで落とそうか、実は最後まで迷ってたんだ
でもなんというか、どろどろ…とは少し違うかもしれないけど、狂気EDのほうにしたくてこっちにしちゃった >>103
経緯か…
最初は4コマまんがで同人誌を出そうと思ってて、ゆる日常系の中で一つこっそり進行していく裏の大筋みたいなものを入れたいな…ああそうだカプの恋愛を進行させよう…みたいな思惑を描いてたんだ
そこで白羽の矢を立てたのがかなりこで、かなりこというカプの可能性について考えてたら、間に千歌がいて初めて繋がる二人だと思った…っていうのは先に書いた通りで。
表がゆる日常で裏が狂気っていうのは、コントラストが取れていいかもな〜なんて。
ただ、そういえば致命的に絵が下手くそだったことを思い出したんで、せっかくだしかなりこだけ抜き出して話を固めてみた、ってところかな…
聞きたかったことこれで答えになってる? >>105
Aqoursだと、よしまるかなあ
それと、ようまりとよしルビで大好きな同人誌が一冊ずつあるな
μ'sだとのぞにこ! でもほんとにどのカプも好き
これはたぶんアニメしか抑えてないのが原因なんだけど、Aqoursってメンバー間の親密度が高くなさそうに見えちゃって、限られたカプ以外ほとんどマイナーに思えちゃうんだよね…
だからって別に選り好みはせずに読むんだけど、書くにあたってはかなり悩むことがあるよ >>107
純粋なかなりこね
他の人も要望してくれてたし、書いてみるよ! >>104
ありがとう
ホテルでの髪を乾かすやり取りが素敵だったので自分も純粋なかなりこ見てみたい >>109
うううう ありがとう!
本当に、たくさんこんな風に言ってくれる人がいて嬉しい限りだ…
少しお待たせすると思うから、気長に待っててね >>113
おかげさまで。
微妙にばらつきはあるけど、週に一本くらいのペースでss投下していくつもりなので、見掛けたらよろしく! ぬしくんすきすき
だから気が向いたらちかよし書いてくださいお願いします
>>115
カボスさんすきすき
ちかよしね 心に留めておきます!ゞ 地震なしのことは気にしなくていいよ
書き込みに特に理由はないから