
「口に口が入ってきた!」。衝撃的なその一言から問題は発覚した。
舞台は大阪府内の病院。入院中の女性が男性職員にわいせつな行為をされたと家族に訴えたのだ。
病院と職員に慰謝料200万円を求め、大阪地裁に訴訟を起こしたその女性の年齢は何と90代。
対する職員は聞き取りに対して行為の一部を認めたというが、訴訟では一転して病院ともども争う姿勢を見せている。
専門家は日本の介護現場における「異性介護」の問題点を指摘している。
仰天の告白
訴えによると、問題が起きたのは平成27年10月のことだった。認知症を患って入院していた90代の山田マサエさん=仮名=は、
担当の男性介護職員Aにいきなり胸を触られ、キスをされたという。
数日後、山田さんは見舞いにきた娘に被害を打ち明けた。「ヘルパーに乳房を上下に揺らされ、口に口が入ってきた」。
驚いた娘は病院の看護師に伝え、対処を依頼することになった。
およそ10日後、山田さんの家族と病院側との面談の場が設けられた。
同席したのは院長と事務長、看護部長と看護師長。翌月にも再び面談があったが、病院側からは反省も謝罪もなかったと、山田さん側は主張している。
このほか時期などははっきりしないが、顔を平手で殴打されたり、首をつねられたりする暴行を受けたほか、
先の性的虐待については病院側から「水に流しましょう」とも言われた、と山田さん側は訴えている。
一連の事態を受け、山田さんの家族は病院の看護・介護態勢に不安や不信感を募らせ、山田さんを転院させることを決意。
別の特別養護老人ホームで受け入れてもらえることが決まり、山田さんは現在そこに入所して、安定した生活を送っているという。
山田さん側は今年5月に「人格権を侵害して精神的苦痛を与え、不安な精神状態に陥れた」として病院を運営する医療法人と職員を相手取り、
慰謝料計200万円の支払いを求めて大阪地裁に訴訟を起こした。
「つい唇にチュッと…」
これに対し、病院側は「職員が女性に不適切な行為をしたことは認める」とする一方、山田さん側の主張のいくつかの点については反論した。
病院はAに聞き取り調査を行ったといい、その際のAの回答は
「山田さんが処置に『ありがとう』と言ってくれたので、つい唇にチュッと触れてしまった」「女性の胸に触れた」などというものだった。
これに関しては山田さん側も、Aが書いたとされる反省文を証拠として提出している。
《私は10月X日の20時くらいに、患者様のおむつ交換を終えようとしたときに指示通りのかゆみ止めの薬を患者様のお尻全体に塗り、おむつをしめ、患者様の衣服をととのえ、病室を後にする際に患者様が「ありがとう」と言ってくれたので、
その時にやってはいけないと分かっていましたが、患者様の口に軽く触れてしまいました。本当に申し訳ありませんでした》
反省文では、Aが自らの行為について箇条書きで強調している部分もある。
《(1)性的行為などは絶対していません
(2)患者様に「ありがとう」と言われ口に触れた
(3)口の中には唾液が入ることはない
(4)胸は触れただけです
(5)おむつ交換以外は下の方は触っていません》
山田さん側は「病院がAの性的虐待を把握しながら家族に連絡しなかった」とも批判しているが、病院側はこれを真っ向から否定。
問題を覚知した数日後には山田さんの娘に電話で報告したほか、再発防止策をまとめ、その内容については山田さんの家族との面談で書面にして渡したとしている。
Aは争う姿勢
また病院側は、訴訟前に山田さんの家族が1千万円の慰謝料を請求してきたと主張。
それを拒否したところ今回の訴訟が提起されたことや、訴訟での請求は200万円だが病院が調べた限りではAは山田さんに暴行は加えておらず、
「慰謝料が高額すぎる」としている。
Aがこの事件から約1週間後に、病院を退職したことも明かしている
http://www.sankei.com/smp/west/news/170725/wst1707250003-s1.html