https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-12-08/P0MIXK6JTSE801
LGBT差別解消法、「必ず作る」−同性愛公表の立民・尾辻衆院議員
「新しい挑戦をさせてもらっている」−。700人を超える国会議員の中で唯一、同性愛者であることを公表している立憲民主党の尾辻かな子衆院議員は1カ月余り前に入ったばかりの議員会館で決意を示した。
まずは東京五輪・パラリンピックが開催される2020年までに性的少数者(LGBT)の差別解消法案を成立させ、いずれは同性婚の合法化も実現させたい考えだ。
尾辻氏は7日、ブルームバーグのインタビューで性的指向や性自認による差別や偏見が生じないための差別解消法を20年の東京五輪までに「必ず作る」と話し、その後「10年以内くらい」をめどに同性婚の合法化を目指したいと
意欲を示した。尾辻氏は10月の衆院選では大阪2区から立候補し、比例復活で初当選した。13年に繰り上げ当選で参院議員を務めたが、衆院での議席獲得は「時代の変化の一つ」と強調する。
世界では同性愛者の権利を認める動きが徐々に広がっている。7日、オーストラリアの連邦議会で同性婚を法的に認める法案が可決。
ターンブル首相は「平等と愛への賛成票を投じた」と語った。このほか英国やアイルランド、ニュージーランドなど約20カ国が同性婚を合法化している。
一方、国内ではLGBTに関する自民党幹部の発言が波紋を広げた。共同通信によると、竹下亘総務会長が11月、
党会合で宮中晩さん会への国賓の同性パートナーの出席に反対すると発言。尾辻氏は自身のツイッターで、ルクセンブルクの首相が同性愛者であることに触れ、「国際問題になるので早く撤回される方がよい」と即座に投稿。9000回のリツイートがあった。
尾辻氏はインタビューでも「国会に当事者がいる時代に何を言っているんだ」と批判。こうした発言の背景には、性別や血縁にとらわれない「多様な家族」という在り方に「非常に抵抗を感じる人々がいる」と指摘する。
LGBTに関する法整備が進んでおらず「排除してもいいと思ってしまっている」とみている。
カミングアウト
尾辻氏は大阪府議会議員だった05年、同性愛者であることをカミングアウトした。自らの性的指向を公にすることでLGBT当事者の存在を「可視化」し、どういった困難があるのか伝えたいと考え決断した。
「それだけをやりたいのか」と思われることは不本意で、任期4年の折り返しとなるタイミングで公表した。
家族にはすでに伝えていたが、公表当初は親戚や近所の人たちの理解は得られなかった。両親にとっては「悪いことをしたかのような沈黙の中で過ごさないといけない」状況になり、「非常に迷惑をかけた」と胸の内を明かした。
地域代表の色合いが強い衆院小選挙区では、「マイノリティーが候補者として立つこと」自体が難しかった。
LGBT当事者であることが自身の「全てではない」とさまざまな活動に取り組み、「やっと候補者になることができた」と振り返る。
選挙公約
10月の衆院選では自民党も含め、大半の政党が公約でLGBTをめぐる課題に触れた。立憲民主の枝野幸男代表は、11月の国会代表質問で党として「LGBT差別解消法の制定を目指している」と明言。自民党も公約で「広く正しい理解の増進を目的とした」法律制定を目指すと明記した。
しかし、当事者である尾辻氏は各党とも課題認識はあるものの、保守層への配慮等から「自民党は差別という言葉を使いたくないという意向がある」と指摘。
人権問題として「差別解消」の言葉を法律で明記することが必要だと考える。同性婚や同性パートナーの法的保障がないことは「差別的な取り扱いであり、許されない」ことを明確にするためだ。
法制化の実現には、与党も含めた合意形成が不可欠となる。尾辻氏は国会にいる当事者として「ひとつの役割を果たせる」と意気込んでいる。