問題は、これだけキャッシュレス決済が進行している海外と比較して、なぜ日本ではキャッシュレス化が遅れるのか。
その理由は、銀行の経営基盤にかかわる事情があるからだ。周知のように、日本にはATMが街のあちこちにあって、
気軽に現金を引き出すことが可能だ。昭和の時代には超便利になったと思ったものの、考えてみれば預金者は、
1日の大半の時間は1回あたり108円〜216円のATM手数料を払いながら、自分のおカネを引き出している。
言い換えれば、日本の銀行の経営基盤には、このATM手数料が重くのしかかっている。
日銀もそれを理解していて、韓国や中国のような急速なキャッシュレス社会のインフラ整備には手を付けられない。
実際に、地方銀行の平均的な純利益の額は約147億円(2016年3月期)だが、その約13%はATM手数料で稼ぎ出している。
ちなみに、ATM手数料だけで利益を稼いでいるセブン銀行では、純利益261億円のうちの99%をATM手数料で稼いでいる。
最近になって、メガバンクや地方銀行が相次いでATM手数料や両替手数料の値上げに踏み切っているが、アベノミク
スによる大規模緩和やマイナス金利政策の影響で、収益構造の見直しが迫られている。
ATMなどの手数料収入ぐらいしか収益拡大の手段がないのかもしれない。
安易にキャッシュレス化を進めてしまうと、銀行経営の悪化に直結する可能性が高い。マイナス金利や
大規模緩和で経営基盤が揺らいでいるところに、キャッシュレス社会への移行を急ぐわけにはいかないわ
けだ。フィンテックの進展によって、2025年までに銀行の収益が最高で4%喪失するという予測も経産省のレポートで発表されている。
http://toyokeizai.net/articles/-/213258