
在留資格新設 急ごしらえに過ぎる
足早に過ぎないか。
政府が、外国人労働者の受け入れ拡大に向け、二つの在留資格を新設する入管難民法などの改定案骨子をまとめた。今月召集の臨時国会に法案を提出し、来年4月の導入を目指すとしている。
少子高齢化に伴う人手不足は、特に地方で深刻になっている。対策が急がれるものの、外国人が溶け込める社会環境をどう築くか。短期の在留資格が適当なのか。あまりに議論が足りない。
国内の外国人労働者は年々増え、昨年10月末で128万人に上る。政府は高度な専門人材に限って就労を認めているため、このうち50万人超を留学生のアルバイトと技能実習生が占める。
身に付けた技術を母国に持ち帰ることが目的の実習生が、単純労働分野の「安価な労働力」と見なされてきた。違法な時間外労働を強いるといった、企業側の不正が横行している。
改定案骨子は、一定の知識や経験が必要な「特定技能1号」と、熟練技能を要件とする「特定技能2号」を新設する内容だ。2号にのみ家族帯同を認め、条件を満たせば永住も可能としている。
介護や農業、建設、宿泊、製造業、造船、水産業をはじめ、十数業種が受け入れ対象の候補に挙がっている。
問題の一つは、地域社会の環境づくりだ。外国籍住民の相談体制が整っている市町村は多くない。国はまず、自治体に対応を呼びかけ、NPOや住民とともに準備の先行を促すべきだろう。
もう一つは、外国人労働者の人権擁護だ。技能実習生の過酷な労働状況さえ改善できない現状では心もとない。
骨子は、日本人と同等以上の報酬の支払いを盛っているが、企業監視を強化し、労働法や社会保障制度を十全に適用することも欠かせない。
特定技能1号の在留期限は5年で、家族と離れ離れになる。敬遠されかねない。人手不足は日本だけでなく、
韓国や台湾、香港、シンガポールなどの国と地域が、日本が当てにする東南アジアで人材確保に乗り出している。
政府は在留資格新設で、数十万人の労働者増を見込む。厳しい条件を付けた「入れ替え制」のような仕組みで事足りるのか。
日本の人口は50年後、8800万人に減る。恒常的に外国人を必要とする時代のとば口に立っていると言っていい。
社会構想と密接に関わる問題だけに、急ごしらえで見切り発車することなく、慎重に議論してもらいたい。
https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20181013/KT181012ETI090016000.php