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戦後思想界の巨人・吉本隆明が、その最晩年に語り下ろした小さな本がある。『フランシス子へ』。この本は、それまで吉本が見せてきた「男性的な顔」とはまったく異質の手触りを持っている。その魅力を中沢新一さんに解説してもらった。
文/中沢新一
吉本隆明はよく人と論争をする人で、そういうときは江戸っ子が着物の袖をたくし上げるようにして喧嘩の姿勢をとるのとそっくりの仕草をした。
季節が夏で着ているのが半袖のワイシャツであっても、何度も短い袖をたくし上げる動作をして、自分の気持ちはいま喧嘩腰である、という無意識の信号を相手に送った。
そういうときの議論の相手はほとんどの場合が男性で、私はしばしば、オスの鶏同士が闘鶏をしているみたいだ、と見惚れたものである。https://gendai.ismedia.jp/articles/-/48390