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森脇健児さん、壁にぶつかったら?
タレント森脇健児さん(48)
――テレビ番組「走る男」で人気を集めましたが、アップダウンの激しいタレント人生ですね。
「最初は関西で活動してたんですが、20代前半で東京に行きます。フジテレビの『笑っていいとも!』や『夢がMORIMORI』に出演して。大阪と東京を多いときは1日1往復半してました。時間を節約するためヘリコプターで和歌山や四国から大阪に飛んだこともあります。
魔法みたいにやりたいことがかなうんですよ。ドラマに出たいとか、CDを出したいとか。都内にマンションも買って、ベンツ2台に乗ってましたね」
「でも30歳で人気の潮がどかんと引くんです。レギュラー番組が10本以上あったのに、京都の放送局の1本になりました。車もマンションも売って。東京で稼いだ分は全部なくなって関西に帰りました」
――そのころ、よく走っていたそうですね。
「走ってたのはヒマだからです。仕事がないとき、京都のボクシングジムに行って近くをよく走ってました。それが、テレビ番組の『オールスター感謝祭』(TBS)の出演につながるんです。ミニマラソンで優勝して、走るのが芸になるって思ったんです。全国各地をひたすら走る『走る男』という番組もできました。いまも毎日、家の前の坂や裏山、寺の階段を走ってます」
――森脇さんにとって、仕事とは何でしょうか。
「東京の仕事がまったく来なくなり、関西でいろんな仕事をしました。華やかな大阪城ホールのイベントも、小さな寺のお祭りも一生懸命やって。お客さんと近くで接して、やっぱり芸能の仕事が好きなんだと分かったんです。『一隅(いちぐう)を照らす』ことの大切さにも気づきました。小さな仕事を光らせないと次の仕事もありません。だから、どんな小さな仕事もありがたくてしょうがなかった」
「いろんな職業の人を見てて、カッコイイなという生き生きした人がいるじゃないですか。『いらっしゃいませ!』と元気よく言う人と、何にも言わない人がいたら、どっちの店に行きますか。タクシーでもこの運転手さんのサービスだから乗りたいという人がいるじゃないですか。仕事って職業じゃなくて、その人の生き方なんですよね。
『努力する者、夢語る。サボる人間、愚痴語る』。悪口、愚痴を言うような人には仕事の神様はほほ笑まないし、運も来ない。僕もそうでしたから」
――これから就職する若者にアドバイスを。
「大好きな自分の尊敬する先輩を見つけて、その人のしゃべり方から立ち振る舞いまで全部まねしてみては。僕も芸能界に入って、若井はやと師匠の付き人をやったんですが、師匠は何にも教えてくれなかった。まねすることで、空気感や間合いを学んだんです。すてきな先輩もいるはずなので、まねしてたら得るものがあるかもしれない」
――就活がうまくいかなかったり、仕事を始めてから壁にぶつかったりしたらどうすればいいですか。
「どんと上がって、どんと落ちた経験から言えるのは、自分しかないと思える技を身につけるということかな。いま一生懸命やったことが、10年、20年たっても役立たないかもしれない。僕も走り続けたことが生きてきたのは40歳を過ぎてからです。夢はすぐにはかなわないかもしれない。でも、あきらめたら終わりだから。やり続けていれば可能性はあるんです」(大宮司聡)
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もりわき・けんじ大阪府枚方市出身。中学から陸上部に所属し、洛南高校(京都)時代には、4×100メートルのリレー選手として高校総体に出場した。高校在学中に松竹芸能のオーディションに合格。桃山学院大学4年のときに「ざまぁKANKAN!」(読売テレビ)の司会となり、人気を集める。
1991年ごろから97年ごろにかけて東京を中心に活動し、「笑っていいとも!」(フジテレビ)などに出演。2008年からKBS京都などで放送した番組「走る男」では、全国各地を走破し、ランナーとして知られるようになる。現在、「よなよな」(毎週月曜夜、ABCラジオ)などに出演中。