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https://digital.asahi.com/articles/ASM1D2TVMM1DULZU001.html
「性を表通りに」、TENGAの挑戦@ものづくりへの愛
自動車、テレビ、パソコン、化粧品……。世界中で売れている日本企業の商品は、いろいろあります。
日本の中小企業が開発し、60を超える国々で売れている商品があります。
その名は「TENGA」。
男性用のマスターベーション用のグッズです。2005年に発売され、昨年7月、累計の出荷数が7400万個を突破しました。
55歳である私ですが、いろいろなアダルトグッズにお世話になってきました。けれど、かつて手に取ったことがあるマスターベーション用のグッズは、ひどいものでした。
たしか、エッチな言葉や絵が描かれていたように思います。でも、いったい誰がつくったのか分かりません。安全なのかも分かりません。なので、使う気になれませんでした。
今回の取材でTENGAを手にし、私は驚きました。
まず、形がきれいで、おしゃれなのです。整っていて美しいことを「典雅」と言いますね。それをアルファベットにしたのが、商品名なのだとか。
そして、真剣に、責任をもってつくっている姿勢に好感を持てました。製造元と販売元が書いてあったのです。問い合わせ先として、お客様相談センターの電話番号も記されていたのです。
そして、そして。注意書きを読んで、思わず笑ってしまいました。こんな風に書かれていたのです。
○幼児の手のとどかないところに保管してください。
それはそうですよねえ。こうもありました。
○誤って口などに入れた場合の責任は負いかねます。
入れることができるほど大きい口を持っている人は、「びっくり人間」です。その昔、伝説となった「口裂け女」なら入るでしょうか。
製造元・販売元として書かれている会社は、女性用のグッズも開発しています。不妊に悩む人たちを助ける商品も開発しています。ある商品は障がい者の性を支えています。また、医療現場でも使われています。
その会社は、こんなビジョンを掲げています。
「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」
私が言うのも僭越(せんえつ)ですが、昔から性は秘め事でした。もちろん、今も秘め事ではあります。けれど、男も女も、人に危害や迷惑をかけない限り、個人の快楽、心地よさを求めるのは自由です。愛を確かめあうのも自由です。性のことで悩んでいるなら、胸を張って相談すればいいのです。
取材をしていて、そう、あらためて思った次第です。
その会社の調査では、日本人のマスターベーション経験率は、男性が96%、女性が58%。そして、日本の男女4人に1人が、アダルトグッズを使ったことがあるのだとか。
さて、その会社、つまりTENGAの製造・販売元の名は、ズバリ「TENGA」。東京都港区にオフィスがあります。社員およそ100人、年商60億円弱の会社です。
社長以下、みなさん、熱いんです。愛と自由の騎士として、世界を変えたいと頑張っている人たちの集まりなのですから。
今回は4回にわたって、この会社の挑戦をひもときます。
触って感じて自分の体TENGA広報女子が挑むタブー
まずは、起業した社長の物語から始めましょう。その人の名は松本光一さん、51歳。今回は、起業をしようとひらめくことになる「運命の日」までを描きます。
◇
松本は、静岡県の焼津市に生まれた。幼い頃から、こんな風に両親に厳しく教育された。
何かしていただいたら、かならずお礼を言いなさい。自分が間違えていたら、素直に謝りなさい。弱い者いじめをしては、なりません。正しいことをしなさい……。
何事も他人のせいにしない男に、松本は育っていく。
工作が得意だった。紙で車やロボットなどをつくった。小学2、3年のころ、学校で紙工作の授業があった。松本は、凝りに凝った作品をつくり始めた。
それを見た教師たちが、小さな声で言い合う。
「彼は工作がうまい」「でも、作業が遅いんだ。困ってしまう」
大人たち同士の会話だけれど、松本少年の耳に入ってきた。
〈勝手に言っていればいい。ボクはつくりたいものをつくる〉
小学生のころから、松本はものづくりに妥協しなかった。ものづくりへの愛、それは松本の半生を貫いている。
日本で、スーパーカーがブームになった。松本少年は、展示会に行った。
車の形が、かっこいい。車の色が、きれい。エンジンが後ろについている。馬力も、すごい。ドアが上に開く。内装もおしゃれ。