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共学と別学、「ジェンダー平等」の受け入れ方に影響?
男子だけ、女子だけしか入れない「別学」か、男女どちらでも入れる「共学」か。10代をどちらで過ごすかは、成人後の「ジェンダー平等」の受容の仕方に何か影響を与えるのでしょうか。そこで過ごした、あるいは過ごす日々をどう感じ、どう考えているのか、みなさんにアンケートでお聞きしてみました。
「難関校ほど別学を変えず」森上教育研究所代表森上展安さん
首都圏では近年、別学から共学にする中高一貫校が増え、中学受験では「共学校人気」が続いています。
共学が増えた理由は、少子化の中で生き残りをかけた学校の経営改革の手段だからです。
@共学にするA学校名を変えるB新校舎を建てる、という3点セットで、落ちたブランドの再生を図り、生徒を集める学校が増えているのが現状です。
もうひとつは中堅どころの大学の付属中高一貫校で、共学化し、優秀な生徒を確保しようとする学校が増えています。「付属人気」と「共学人気」は重なっていて、これに加えて公立の優秀な中高一貫校ができたことも大きいでしょうか。中位の学校ほど共学化が進んでいます。
つまり共学化は、多様性やジェンダーを重んじている社会の潮流を反映した改革というより、経営の事情によるもので、結果として選択肢が増え、後から人気が追いかけているように思えます。
ただ、共学・別学への意識は昔とは変わっている面もあります。ある女子校の説明会で、保護者から「なぜこの学校は女子校なのか」という質問が出たそうです。過去にない質問で学校側を驚かせました。それだけ「別学」が特別で、何か方針がある、と思われたのかもしれません。
偏差値が高い最難関私立の男子、女子校でも、世の中のジェンダー平等の流れを意識しない学校はないでしょう。ただ、ある有名男子校の前校長は「うちは最後に共学化する学校でしょう」と言っていました。裏を返せば、共学化することはまずない、と考えているようにも聞こえます。実際のところ、別学の難関校には、共学化しなければいけない内発的な理由は全くないからです。
中高一貫6年間の「出口」は大学進学です。学びの本質とか子どもの自主性など、学校は教育理念は宣伝しますが、東大合格者が激減したら入学希望者は間違いなく減ることも知っています。
だから難関校は「帰国子女枠」にも消極的ですし、世の中の流れがどうであれ、うまくいっている間は、経営資源を余計な改革に使いたくないというのが本音でしょう。(中島鉄郎)
「目立ちたがらぬ共学女子」前大津市長・弁護士越直美さん
私が市長をしていた大津市の市立小中学校で、2017、18年度に児童会・生徒会長の性別について調査しました。
きっかけは、市の女性管理職を増やそうとしたところ、断る女性職員が多かったから。理由の一つが「自信がない」でした。「育児や家事の負担」を挙げる人もいましたが、それは働き方の見直しで対応できる。でも、「自信がない」の解決方法はなかなか見つかりません。若手職員に「市の未来」についてグループ発表をしてもらった時も、発表者はすべて男性でした。そこで、なぜ「自信がない」のか、その傾向はいつから表れるのかを調べようと思ったのです。中学校の女子が会長をやりたくない理由として最も多かったのが、「目立ちたくない」でした。
女の子たちの「目立ちたくない」という気持ち、実は私にもよく分かります。私はずっと共学でしたが、高校ではっきりものを言ったり積極的に発言したりしたら、男子から陰口を言われたことがあった。それを機に学校で発言をやめました。でも大学を出て東京の弁護士事務所に入ると、女子校出身の弁護士たちが、自分の意見を主張することに何の物おじもしないことに驚きました。「女子だから」と見られることのない教育環境が、影響しているのではないかと感じました。
私が「目立ちたくない」を脱し、市長になったのは、米国での経験が大きかったと思います。ロースクールでは発言しなければ授業に貢献していないと見なされるので、発言せざるを得ません。間違いも恥ずかしいことではありません。だから共学の学校でも、積極的に女子に声をかけたりサポートしたりして、子どもたちや学校全体の意識を変えることが必要だと思います。
私が大津市で中学生だったころ、家から通える私立の進学校は男子校のみで、女子には公立共学高校へ行く選択肢しかほぼありませんでした。就職活動では、氷河期だったこともあり、男子学生には企業から誘いがあるのに、女子学生は民間企業への就職は難しかった。社会のあらゆる分野、あらゆるレベルに、ジェンダー格差が存在します。「どこから手をつけたらいいのか」と問われれば、私は「すべて」と答えます。