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お墨付きあれば優良マンションか 管理計画認定制度
国土交通省によると、築40年超のマンションは2018年末の81.4万戸から28年末には2.4倍の約198万戸、38年末には4.5倍の約367万戸となる見込みです。今後、老朽化や管理組合の担い手不足が顕著な高経年マンションは急増するとみられます。
こうした中、老朽化を抑制し、居住者や近隣住民の安全を確保するため、22年4月にも、地方公共団体がマンション管理に「お墨付き」を与える制度が始まろうとしています。マンション管理水準の底上げや、中古マンションの流通活性化につながることが期待されています。
お墨付き基準は最低基準
お墨付きの基準とはどのようなものなのでしょうか。今年3月に開催された「第5回マンション管理の新制度の施行に関する検討会」の会議資料には、管理計画認定制度の認定基準案が示されています。基本的には、これまで国土交通省が発表してきた「マンション標準管理規約」「長期修繕計画作成ガイドライン」「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」などをもとに、「こうあるべき」という最低基準をお墨付きの基準に据えた形です。
実際、一般的なファミリー向け中古マンション売買仲介の現場で、様々な管理関係書類の開示をお願いすることがありますが、認定基準案に当てはまらないことは多いです。長期修繕計画が集会で付議されていないケース(参考資料として添付されているだけのケース)、修繕積立金の平均額が著しく少ないケース、修繕などの履歴情報が簡易なリストのみで、修繕工事の完了報告書がないケースなどによく出くわします。また、賃貸比率の高い投資用マンションなどは、この基準を守れていないことが多いように感じます。
予想以上に低い管理水準
マンション管理士の川島崇浩氏によると、認定制度の目的は、管理不全マンション増加の抑止だけでなく、マンション管理会社の底上げという側面もあるそうです。川島氏は「マンション管理はマンション所有者で構成される管理組合で主体的に行うものではあるものの、実態は管理会社に委託し実質的に『お任せ』になっているケースが多い。問題なのは、最低限の基準を満たす管理を提供できていないマンション管理会社が多いという実態だ」と指摘しています。
また、大手デベロッパー系列の管理会社の中にも、この基準に満たない管理しか提供できていない会社があるそうで、一般社団法人マンション管理業協会がこの認定基準に近い形で作成した仮評価シートを利用して、あるブランドマンションを管理会社が評価してみたところ、予想以上に評価が低かったことが明らかになり、所有者(管理組合)と管理会社でもめているところもあるそうです。
お墨付きは優良マンションの証しではない
こうしてみると、管理計画認定基準はあくまで最低基準であり、認定されているからといって必ずしも「優良な管理がなされているマンション」というお墨付きを与えられたものではないと考えたほうがよさそうです。来春以降、不動産仲介会社の中には、このお墨付きをセールストークに使う所が出てくることが予想されますが、ユーザーとしては「最低限をクリアしているマンション」と認識すべきかもしれません。
一方、マンションを所有している人はこれを機に、管理会社と管理水準の向上に向けた行動を起こすことをお勧めします。自分のマンションの管理会社に問い合わせれば、仮評価であるという結果が分かる可能性があります。その評価の中身を吟味し、何をどうしていくか、早めに対応していくことが大切だと思います。
最低限の基準とはいえ、これをきっかけに基準以上の管理水準を目指し、その資産価値が維持向上すれば、中古マンションの流通活性化につながると思います。