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山上の行為が許されざる凶行であることは、言うまでもない。ただ彼らのような人々にも、手を差し伸べるしくみは今こそ求められているはずだ。NPO法人「ワールドオープンハート」理事長で、これまで2000以上の犯罪加害者家族を支援してきた阿部恭子氏が言う。
「私がこれまで接してきた凶悪事件の加害者にも、仕事に困っていて、相談できる家族や友人もいなかったという人が多いのですが、彼らは自分ですら『社会的弱者』であるという自覚が薄いのです。
収入は低いけれど、なんとか生活はできている。成人男性なので、女性やLGBTのような『マイノリティ(少数者)』というカテゴリーに入ることができず、支援もつながりも得られない。その結果、孤独の中で自らの境遇を客観的に見ることができなくなり、『自分は不幸なんだ』という思いを暴走させてしまうのではないでしょうか」
山上の幼少時には、彼の家庭は比較的裕福だったとも報じられている。しかし山上は、転落したまま這い上がることができなかった。そして誰にも顧みられないまま、やり場を失った怒りを銃弾に変えた。
民主主義が壊れる――そんな取ってつけたようなお題目を唱えただけでは、第二、第三の「テロリスト」を止めることはできない。この国はとっくの昔に、もっと深いところで自壊を始めていたのだから。
https://news.yahoo.co.jp/articles/da9c4066dcd077c5632a24137a0628229622bc43?page=2