高橋氏の“集金能力”は、日本オリンピック委員会(JOC)にとっても願ってもないものだった。
「JOCに電通が食い込むきっかけとなったのが、1980年のモスクワ五輪を前に始まった『がんばれ!ニッポン!キャンペーン』です。選手の肖像権を利用して協賛金を獲得し、それを選手の強化費にまわすキャンペーンで、万年資金不足だったJOCにとっては、このうえなくありがたいものでした。これを主導したのが高橋さんで、JOCの運営は電通なしには成り立たなくなりました」(電通社員)
こうしてスポーツ界に圧倒的な影響力を持つにいたった高橋氏にとって、五輪を成功させて自らの手柄としたい政治家たちを取り込むことは、いともたやすいことだった。
2020年12月15日の菅義偉首相(当時)の動静を見ると、各紙は横並びでこう報じている。
《「ステーキそらしお」でフジテレビの宮内正喜会長、遠藤龍之介社長、東京五輪・パラリンピック組織委員会の高橋治之理事と会食》
「ステーキそらしお」は、高橋氏が東京・六本木で経営する店で、「特選銘柄牛コース」が2万2000円という高級店だ。
「高橋氏は、『ステーキそらしお』での会食は店のプライベートルームでおこないます。ここには、FIFAの幹部など世界のスポーツ界の重鎮と撮った写真などが飾られています。この部屋に政治家たちをわざわざ呼びつけて自身の功績を誇示し、マウントを取るのです」(JOC関係者)
女性蔑視発言で組織委員会会長を辞任した森喜朗氏とも、高橋氏は昵懇の仲だ。
「高橋氏は政治家を下に見ているところがあり、森氏に対しても大きな態度をとることがあります。組織委員会の会合でも、森氏が起立しているなかで、腰を上げない人物は高橋氏くらいでした」(同前)
元JOC参事で五輪アナリストの春日良一氏は、今回の騒動についてこう語る。
「高橋氏には、招致委員会から9億円ものコンサルタント料が振り込まれていました。同様の個人契約はほかに十数件ありましたが、金額はせいぜい3000万円ほど。高橋氏はスポーツ愛というより、いかにスポーツがカネになるかで動いてきました。国際スポーツ機関のトップや東京五輪関係者との人脈も、そのための手段にすぎなかったのです」