安倍元首相の国葬、際立つ特別扱い 内閣府設置法の「国の儀式」としては天皇の国事行為以外で初
2022年8月31日 06時00分
安倍晋三元首相の国葬が、天皇の国事行為以外で「国の儀式」として実施される初めてのケースになることが分かった。今回と同様、内閣府設置法に基づく式典には東日本大震災の追悼式などもあるが、いずれも「内閣の儀式・行事」という扱いになっており、極めて異例の対応だ。ただ、国事行為が憲法で裏付けられているのに対し、国葬は法的根拠そのものにも疑義を唱える声があり、有識者は事前に十分な国会審議が不可欠だと指摘する。(坂田奈央)
2001年施行の同法は、内閣府の所掌事務として「国の儀式」と「内閣の行う儀式・行事」を並べて明記。国葬に関する直接の規定はないものの、岸田文雄首相は「国の儀式として行う国葬儀は、閣議決定を根拠に行政が国を代表して行い得る」と説明している。
◆過去の首相経験者の国葬は「内閣の儀式」
内閣府によると、これまで行われた「国の儀式」は、19年4月の天皇退位に伴う一連の儀式や、毎年元日に皇族がそろう「新年祝賀の儀」など、いずれも憲法7条で天皇が行うと定められている国事行為だけ。今回の国葬は憲法のみならず、法律にも明確に定められていないが、同じ扱いにする。過去にあった首相経験者の合同葬は「内閣の儀式」、東日本大震災追悼式などは「内閣の行事」だった。
松野博一官房長官は、国葬を「内閣の儀式」ではなく「国の儀式」とした理由について「元首相の葬儀は諸般の事情を踏まえながら、総合的に勘案し、ふさわしい方式を決めている」と述べるにとどめている。
◆国会できちんと議論重ねて
国葬の歴史に詳しい宮間純一中央大教授(日本近代史)は「『国の儀式』が現時点で天皇の国事行為の儀式と国葬しかないのなら、強い違和感を覚える」と指摘。国事行為としての儀式は、国民に定着した憲法に位置付けられ、広く同意があるとみなせる一方、「国葬は直接、位置づける法令がない。国を挙げてやるというなら、国会できちんと議論を重ねるという手続きが重要ではないか」と強調する。
戦後の国葬は1967年の吉田茂元首相以来、2例目。政府は現在、前回も「国の儀式」として実施したという見解だが、当時は内閣府設置法の制定前で、法的根拠はあいまいだ。内閣府の担当者は「(閣議決定の文書などで)同じ文言は使っていないが、『国の儀式』であるということを念頭に置いていた」とする。
※略※
https://www.tokyo-np.co.jp/article/198972