■安倍、山谷、萩生田の反ジェンダー
鈴木エイト氏は、当時の小泉内閣において進められていた男女共同参画基本計画の第二次5カ年計画に対して、この2人が反動的な動きをしていたことに注目する。
〈2005年4月、「自民党 過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」を結成し、当時幹事長代理だった安倍自身が座長に納まった(山谷は事務局長)。
結成の翌5月には、党本部8階ホールにおいて、「過激な性教育・ジェンダーフリー教育を考えるシンポジウム」を開催、安倍と山谷の二人はそろってパネリストとして登壇し、男女共同参画基本法やジェンダーを批判した。 山谷はこう発言した。
「ジェンダーフリーが間違っているとの国民的なコンセンサスがやっとできた。次には『ジェンダー』がどうなのか、大きなテーマだ。男女共同参画社会基本法そのものについても検討していきたい」
このシンポジウムの責任者として司会を務めていたのが現政調会長の萩生田光一だ〉
〈2005年10月に発足した第3次小泉改造内閣では、安倍が官房長官に就任し次期首相候補として注目を集めたが、そのとき内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画)に就任したのが元大学教授の猪口邦子だった。男女共同参画会議の議員や専門調査会の委員を歴任してきた猪口は、9月の衆院選で当選したばかりだったが、佐藤ゆかりと片山さつきとともに開いた外国特派員協会での会見で、「私たちがジェンダーバッシングを許さない」と発言、安倍や山谷の反動に対抗する意欲をみせていた〉
■反ジェンダーの動きをはじめた統一教会
こうした“安倍派”の動きと連動するように反ジェンダーの動きをはじめたのが統一教会であり、その活動の一端を示したものがUPFの「21世紀 世界平和の為の 日本女性指導者セミナー」だったということになる(山谷事務所は「文藝春秋」の取材に「セミナーの存在は存じあげておりません」と回答した)。
安倍や山谷と統一教会の直接の接点はまだ不明ではあるものの、この時点ですでに「お互いの思想に共鳴し合う“共鳴関係”にあった」と鈴木氏は指摘する。
実際にこの共鳴関係は、その後「協力的なものへと発展していたことがうかがえる」(同前)。安倍氏はこのセミナーのあとに開かれたとみられる2006年5月のUPFの「祖国郷土還元日本大会」(福岡市)にも祝電を送り、2010年8月には、当時統一教会松濤本部・拉致問題担当委員長だった梶栗正義(現・UPFジャパン議長)が議員会館に安倍を訪ねているからだ。そしてこの関係は、暗殺事件へとつながって行く……。
安倍元首相と統一教会との関係の原点を掘り起こし、暗殺事件にまで深くかかわるUPFとの因縁を解き明かす鈴木エイト氏のレポート「統一教会“安倍派工作”内部文書」は、「文藝春秋」10月号(9月9日発売)に8頁にわたって掲載されている。