全国学力テスト 行き過ぎた事前対策 トップクラス石川県で何が
2022年10月14日 8時51分
小学6年生と中学3年生を対象に毎年実施されている「全国学力テスト」で全国トップクラスの成績が続く石川県で、ことしのテスト直前、多くの学校が授業時間を削り過去の問題を解かせるなどの「事前対策」をしていたことが、県教職員組合が行った調査で分かりました。
全国学力テストをめぐって文部科学省は行き過ぎた対策をしないよう求めていて、専門家は「抜本的な改善が必要だ」と指摘しています。
4月に実施されたことしの全国学力テストで、石川県は中学3年生ではすべての科目で平均正答率が全国1位だったほか、小学6年生でも「算数」が全国1位、「国語」と「理科」が全国2位となるなど、毎年、全国トップクラスの成績が続いています。
校長などから「事前対策」の指示や働きかけあった 回答の7割に
こうした中、石川県教職員組合はことしのテストについて県内280校余りの小中学校の教員を対象に実態調査を行い、104校から回答を得ました。
その結果、授業時間や放課後などに「事前対策」をするよう、校長などから指示や働きかけがあったと答えた学校が、回答した学校の7割にあたる72校に上ったということです。
また、回答の内容を詳しく見ると、テスト直前、多くの学校が連日にわたって授業時間を削り、過去に出された問題を解かせるなどしていたことが分かります。
さらに自由記述では通常の学習への影響を懸念する声のほか、「事前対策をしないと教育委員会の訪問が増える」とか、こうした対策について「学年便りに記載しないように言われた」などという回答もあったということです。
現場の教員は “1年前から対策 塾や予備校のよう”
「全国学力テストへの対策で子どもの育成に関わる体験などの時間が軽視されている」
ことし8月、NHKの情報提供窓口の「ニュースポスト」に、石川県内の公立小学校に勤務する現役の教員から投稿が寄せられました。
教員はNHKの取材に応じ、勤務先で行われている学力テスト対策の実態について語りました。
学校では全国学力テストを受ける1年前、5年生のときから朝の自習や放課後、さらに授業の時間を使って子どもたちに対策問題を解かせているといいます。
1時間の授業で多い時には数年分の「過去問」をコピーして配り、教科によっては年間の授業時間の10分の1、10時間以上を学力テスト対策にあてているケースもあるということです。
テストの直前になると、校長から教員たちに「よろしく」と声がかかり、本番が終わってからも学校としての成績に一喜一憂する雰囲気があるということです。
コマ数が限られる中、指導要領にない内容に多くの時間を割いている現状に、教員は子どもたちの学びに影響が出ることを強く懸念していました。
教員は「体験的な活動を増やして社会や理科をもっと好きになってもらいたくても、学力テスト対策に追われて優先順位が低くなってしまう。子どもたちの大切な時間を使ってまで、塾や予備校のように対策をするのは、教育の機会が均等に行き渡っているか調べるという、学力テストの本来の目的からもかい離していると思います」と話しています。
文科省の見解は
全国学力テストは、学力や学習の状況を把握して授業の改善につなげることなどを目的に15年前に始まりました。
しかし、正答率を上げるため、各地で行き過ぎたテスト対策が行われていることが問題となり、文部科学省は2016年4月「行き過ぎた取り扱いがあれば、テストの目的を損なう」として全国の教育委員会に対し、テスト本来の趣旨を学校に浸透させ適切に対応させるよう求める通知を出しました。
そして、翌2017年以降は都道府県ごとの順位が詳細に分からないようにするため正答率の小数点以下は公表しない形に対応を見直しました。
文部科学省は取材に対し「行き過ぎた対策」の具体例として、正答率の上昇だけを目的にテスト実施前に集中的に過去問や対策問題を解かせること、学力テスト対策としての指導を授業の進行に影響がある形で授業時間を削って行うことなどを挙げています。
一方で、学力テストの問題は「良問」であり、子どもたちの授業の理解につなげるため活用することについては推奨しているとしています。
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https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221014/k10013858211000.html