
「アニメ業界は低賃金でブラックな業界だ」とよく語られがちですが、毎年膨大な数のアニメが作られており、サブスクリプションサービスによる動画配信もあって、ますますアニメ業界も盛り上がりを見せています。
そんなアニメ業界の今について、「キルラキル」「グリッドマンユニバース」などの制作会社で知られるTRIGGERの取締役・舛本和也さんがマチ★アソビ Vol.27で語るイベント「アニメ業界の今!」が開催され、1時間以上にわたってたっぷりとアニメ業界のリアルな現状を語られました。
◆アニメ業界は本当に斜陽なのか?
X(旧Twitter)でアニメ業界の話を聞くことがある人も多いはずですが、そういった話の多くが「アニメ業界はやばい」という話題です。
しかし、舛本さんによると、ここ2~3年でアニメ業界はすごく変わってきているとのこと。
TRIGGERでは人材の採用も積極的に取り組んでおり、専門学校などをいっぱい回り、200人から300人くらいを見てアドバイスをしているそうです。
アニメ業界を志す学生はXを使って情報収集をしており、不安になりながらアニメ業界に入ってきているそうですが、「これはいかんでしょう」と舛本さん。
Xでの情報というのはまるまるウソではなく、自由な発言の場だから止めようとは思わないものの、悪い情報ばかり発信していたら、アニメ業界の将来にいい影響を与えないんじゃないかと舛本さんは考えています。
10年前の話をすると、アニメ業界自体はめちゃくちゃブラックだったそうで、労働時間・賃金・人材雇用も含めてブラックな業界だったと、舛本さんは述懐。
しかし、それがよくないというのはわかっていたものの、人を育てたり環境をよくしたりするにはお金が必要であり、とにかくお金がなかったためにどうしようもできなかったとのこと。
舛本さんによれば、10年前の時点で30分のアニメ1話を作る制作費はだいたい1500万円だったそうです。
ただし、実際だとこれは全然足りていないそうで、アニメ業界が産業として1つのものを作るにはコストパフォーマンスが悪いことが表れているとのこと。
アニメの制作会社は構造的に下請けの中小企業と同じで、クライアントから与えられたお金でやりくりするというのが50年くらい続いていました。
つまり、アニメ業界の現場に落ちてくるお金が少なかったというわけです。
しかし、8年ほど前にNetflixが来て状況が大きく変わったそうで、「制作費をこれまでの2~3倍出すからアニメを作ってくれ」といわれるようになったそうです。
その後、どんどん規模が拡大していき、制作費も増加。今では30分アニメ1話辺りの制作費は平均値が2500万~3000万円、有名なアニメを制作する大手のスタジオだと1話当たり5000~6000万円の制作費ということもあるとのこと。
ただし、さまざまな理由があり、今だとこれでも足りないという状況だと、舛本さんは述べています。
(中略)
◆アニメ制作の現場から見る業界の今
アニメ業界が成長することで、アニメーターの賃金もかつての2倍以上になったそうです。
これはスタジオ目線でいうと、外注費が高くなったことを意味します。
冒頭で「制作費が2500万~3000万円に上がっても足りていない」と舛本さんが言った理由がこれ。そして、今の課題は人材不足となっています。
年間300本以上もアニメが作られているので、人材不足は当然の帰結。
人材不足というのは、昔は『うまくて描けるアニメーターが足りていない』という意味だったそうですが、アニメ業界の変革によってアニメーターの社員化が進み、フリーのアニメイターが減っているとのこと。
つまり、アニメーター自体がまるっきり足りていないそうです。しかし、人材は必要に応じてすぐに増やすことはできません。
舛本さんは、アニメ業界はブラックかどうかという問いかけに対しては、「今グラデーション化している」と答えているとのこと。
これは「完全にブラックからは脱却したが、完全にホワイトにはなっていない」という意味。
ホワイトな企業もあれば、そうではない企業もあります。
そのため、学生には「会社をリサーチしてください」「直接メールをしてください」とアドバイスしているとのこと
人材確保はアニメの制作会社にとっては死活問題。2024年に放映予定の「ダンジョン飯」を制作するにあたって、アニメーター30名ほどと契約したそうです。
その上で言えるのは技術のあるアニメーターは高収入化していて、技術がないアニメーターの収入は変わっていないということ。舛本さんは、アニメ業界はやはり実力主義なのだと述べました。
https://gigazine.net/news/20231029-anime-gyoukai-now-machiasobi27/